憲法改正がなぜ必要なのか|和田政宗 2022年4月、「危機に乗じて憲法9条を破壊し、日本を『軍事対軍事』の危険な道に引き込む動きを、日本共産党の躍進で断固として止めよう」と訴えた日本共産党の志位和夫委員長。共産党の言う「9条生かした外交で平和をつくりだす」は本当に可能なのか。日本の隣国である中国、ロシア、北朝鮮は果たして「平和を愛する諸国民」と言えるのか。

妄想に近い日本国憲法前文

ロシアによるウクライナ侵略が止まらない。ありとあらゆる手段を通じて停戦させ、ロシアを撤兵させなくてはならないとともに、今回の侵略における教訓は、自らの国は自らの手で守ることが大前提であるということだ。

まもなく5月3日の憲法記念日を迎える。現行憲法の前文には「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とあるが、これは妄想に近いということが改めて明らかとなった。

また、現行憲法はそもそもGHQが当座しのぎで作った連合国的価値観の憲法であるから、日本国民が国を守り国のあり方を示すために憲法改正を行うのは当たり前のことである。

改めて、現行憲法の成り立ちを整理したい。昭和20年、日本を占領しGHQ(連合国軍総司令部)のトップとなったマッカーサーは、新憲法の作成を周囲に示唆した。その意向を受け日本政府は、3ヶ月かけて新憲法の草案を作り上げた。

ところが、この草案はGHQに拒否されたうえ、「GHQで原案を作るから、それをもとに細部を修正して憲法を作るべきである」となった。そこからGHQ内部で急ピッチで作られたのが、現在の日本国憲法である。

GHQによる草案作りの実質的な作業日数は1週間とされ、さらに最近の研究では「3日で作った」という説も出てきている。突貫作業のなかでは、ソビエト憲法やワイマール憲法なども参考にされたため、これらの憲法の条文を「コピペした」と指摘される内容が現行憲法にはいくつも存在する。さらに、かなりアバウトに作られた部分もあった。

憲法9条はなぜできたのか

例えば憲法改正については、「国会各議院の三分の二の賛成によって発議する」となっているが、極めて重要な部分であるのに綿密に検討されたわけではないことが西修駒大名誉教授などの研究で明らかになっている。

この部分の起草にあたっていた人物が作業の片手間で、「過半数かな? 3分の2かな?」と隣の席の人物に聞いたところ、「とりあえず3分の2にしておいたら?」と返答したのでそうなったということが、西修さんなどの学者が当時のGHQ関係者に取材した結果、判明している。

起草にあたったメンバーも、大急ぎで作った日本国憲法はあくまで「間に合わせ」という意識があったようで、取材の際、「えっ、あの憲法をまだ改正もせず使っているんですか?」と驚かれたという。

このようにGHQから渡された憲法草案に、急いで修正を加え、帝国議会での審議もバタバタに成立したのが、現在の日本国憲法である。そして、国を守るうえで足かせとなっている憲法9条はなぜできたのか。

米国の意図は、日本の非武装化であった。日本軍はあまりに強く、ようやく打ち破り日本を占領した米国は、「もう二度と日本とは戦いたくないから、日本に武装はさせない」という考えに至った。では、日本が攻撃されたら誰が日本を守るのか。それは米軍が守る。大規模災害が起きたらどうするのか。それも米軍が出動して対応にあたるというものであった。

しかし、その後、朝鮮戦争が勃発すると状況が変わる。米軍は日本に充てていた人員を朝鮮半島に振り向けることとなる。そこで、日本に警察予備隊を創設させ、その後、保安隊、自衛隊と改編されたのである。

通常の考えであれば、自衛隊が出来た時に憲法改正をすべきなのだが、憲法改正勢力は衆参それぞれで3分の2に達していなかった。3分の2を取れたのは、平成25年の参院選後が初めてであり、それまでは憲法改正をしようにも困難な状況だった。

国土と国民を守れる憲法に!

9条に関連する現行憲法の最大の問題点は、いざという時にどのように国を守るかが明記されていない点である。

こうした国は日本の他に、クック諸島、ニウエ及びモナコの3カ国しかないことはこれまでも述べてきた。いずれも国土は小さく、人口も4万人以下の国である。一定の国土と人口規模を持つ国で、憲法にいざという時に国を守る手段が記されていないのは日本だけである。

他国の領土を侵略しようとしたり攻撃しようとしている国からすれば、反撃できるかどうかすらわからない憲法を持つ国は、攻撃するのにどれだけ楽か。現行憲法は、国土と国民を本当に守れるものとはなっていない。

そこで憲法改正が必要になるわけだが、現下の国際情勢では改正は待ったなしの状況であることは皆様も実感していると思う。自民党は参院選の最重点公約として国民に問い、参院選後に改正条文案を国会に提出すべきである。

国会法においては、1人の提出者に対し、衆議院で100人以上の賛成または参議院で50人以上の賛成があれば、改正原案を国会に提出できる。憲法審査会で一定の合意を得ないと改正原案は提出できないと思っている方がいるが、実はそれより先に国会法に記されているのはこの方法なのである。

であるから、それだけの議員数がいる自民党が憲法改正に向け覚悟を持って行動しないとならないのである。現行憲法の成り立ちからしても、国民投票が一度も行われていないということは、国民不在のまま憲法を放置しているといっても過言ではない。

国民から選ばれた国会議員の責任として、憲法改正を速やかに発議し国民投票を行うべきである。どんな時も、国土と国民を守れる憲法にしなくてはならない。

著者略歴

和田政宗

© 株式会社飛鳥新社