鎌倉で大佛次郎ファンら命日に墓参、没後50年控え「天狗忌」制定 作品継承願いプレ行事も

大佛次郎の命日に墓参し焼香する参加者=4月30日、鎌倉市・寿福寺

 横浜生まれの作家、大佛(おさらぎ)次郎(1897~1973年)の命日である4月30日、親族や研究者、ファンらが大佛が眠る鎌倉市扇ガ谷の寿福寺で墓参した。来年の没後50年を控えて、大佛次郎研究会が人気シリーズ「鞍馬天狗(てんぐ)」にちなみ「天狗忌」を新たに制定。大佛文学の継承を願ってプレ行事も開かれた。

 プレ行事は、鎌倉文士らとの交流の場に活用した同市雪ノ下の旧大佛茶亭で開催。16人が参加した。研究会の手塚甫会長は「50年の月日はあるが、大佛文学は忘れ去られる存在ではない。一つの種をまければいい」とあいさつし、「天皇の世紀」「パリ燃ゆ」「赤穂浪士」「帰郷」など幅広い作品がさらに読み継がれるようにとの願いを込めた。

 この日は、47作に及んだ「鞍馬天狗」を通して作家をしのんだ。会員で選集を編集した秋林哲也さんが「豪傑な剣豪だった鞍馬天狗が作品を重ねるうちに、大佛自身の姿に近くなり知的に進化していった。その延長線上に『天皇の世紀』がある」と解説。会員の原田静さんが第1作「鬼面の老女」を朗読した。

 研究会は、「天狗忌」を大佛文学の愛好者が広く参加できる形で今後毎年開催する。

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