星形成活動が盛んな「隠された銀河」ハッブルが撮影

【▲ 渦巻銀河「IC 342」(Image Credit: NASA, ESA, P. Sell (University of Florida), and P. Kaaret (University of Iowa); Image Processing: G. Kober (NASA Goddard/Catholic University of America))】

こちらは「きりん座」の方向約1100万光年先にある渦巻銀河「IC 342」の中央部分を捉えた画像です。IC 342の明るく輝く中心付近では星形成活動が盛んで、表面温度の高い青く若い星々が放つ紫外線によって水素が電離しています。その周囲は渦巻銀河の特徴である渦巻腕(渦状腕)が取り囲んでいて、塵が豊富なダストレーン(ダークレーン)も絡み合う巻きひげのように広がっています。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、IC 342は見かけの等級が8.4等と比較的明るく、天の川銀河に近い銀河ではあるものの、夜空ではあまり目立ちません。なぜかというと、地球からはIC 342が天の川銀河の銀河面、言い換えれば天の川の近くに見えるからです。

銀河面には数多くの星々星間ガス、可視光線を遮る暗い塵などが集まっていて、同じ方向にあるより遠くの天体の観測は難しくなります。それ故に、IC 342は「Hidden Galaxy(隠された銀河)」とも呼ばれています。NASAによれば、もしも星間物質の量がこれほど多くなかったとしたら、直径約5万光年のIC 342は夜空で最も明るい銀河の一つだったかもしれないといいます。

なお、IC 342はイギリスのアマチュア天文家サー・パトリック・ムーアによって1980年代にまとめられたアマチュア天文家向けの天体カタログ「Caldwell Catalog」(カルドウェルカタログ、またはコールドウェルカタログ)に「Caldwell 5」として登録されています。冒頭の画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡によって撮影されたもので、NASAから2022年5月11日付で公開されています。

【▲ 米国アリゾナ州のキットピーク国立天文台にあるメイヨール望遠鏡で撮影されたIC 342の全体像。2007年2月公開(Credit: T.A. Rector/University of Alaska Anchorage, H. Schweiker/WIYN and NOIRLab/NSF/AURA)】

Source

  • Image Credit: NASA, ESA, P. Sell (University of Florida), and P. Kaaret (University of Iowa); Image Processing: G. Kober (NASA Goddard/Catholic University of America)
  • NASA \- Hubble Spies a Hidden Galaxy

文/松村武宏

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