【厚労省】保険証の原則廃止意向示す/5月25日の社会保障審議会医療保険部会

【2022.05.25配信】厚生労働省は5月25日午前に社会保障審議会医療保険部会を開き、オンライン資格確認の導入状況等を踏まえて、保険証の原則廃止を目指す意向を示した。加入者から申請があれば保険証は交付されることも併記した。骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2022において、「健康保険証の原則廃止」を明記するとの報道がされており、注目が集まっていた。

厚労省は、部会で「オンライン資格確認の更なる対策」を提示した。
以下の通り。

■オンライン資格確認の「更なる対策」
オンライン資格確認については、令和5年3月末までに概ね全ての医療機関及び薬局へのシステムの導入を目指して取組を進めているが、運用開始施設は2割弱に留まっている。
データヘルスの基盤となるオンライン資格確認の導入目標を達成するための「更なる対策」として、以下の①~③を実施することが必要ではないか。
① 令和5年4月から保険医療機関・薬局におけるシステム導入について原則として義務化する。
② 医療機関・薬局でのシステム導入が進み、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう、関連する財政措置を見直す(診療報酬上の加算の取扱については、中医協で検討)。
③ 令和6年度中を目途に保険者による保険証発行の選択制の導入を目指す。さらに、上記以外で保険証を利用している機関(訪問看護、柔整あはき等)のオンライン資格確認の導入状況等を踏まえ、保険証の原則廃止(※)を目指す。 ※ 加入者から申請があれば保険証は交付される

編集部コメント/加算見直しが推進阻害にならないか、慎重な議論が必要

厚労省の資料では、保険証の原則廃止を明記する一方、診療報酬上の加算の取り扱いに関しては中医協で検討するとしている。

加算見直しに関しては、患者負担に理解が得られないことが理由との報道が目立つ中ではあるが、これまでも政策推進に加算が効果を発揮してきた過去がある。

例えば後発医薬品の使用促進では、銘柄指定までが医師の裁量権と責任、といった意見も提示され抵抗感が強かった中で、加算が推進に一定の役割を果たしてきた側面は否定できない。

後発医薬品単独の問題でみれば、現在不祥事が起きており制度の多面的な見直しの最中ではあるが、それでも、この推進において限りある医療財政適正化の恩恵を受けたのはすべての負担を担っている国民ではなかっただろうか。

オンライン資格確認についてはレセプト情報(請求情報)であるため比較的情報のインプットがしやすいが、あとに控える電子処方箋は、診療現場の細かなやりとりによって医療の質を高めることにつながるという面で、より診療のリアルな情報になっていくことが期待される。
オンライン資格確認は、この電子処方箋の基盤であり、オンライン資格確認の加算は単独でみるよりも、今後に続く政策へスムーズにつなぐ役割を持っているのではないか。こうした先をみた視点も必要だ。

スピード感をもったデジタル推進が我が国に必要であることは論を俟たない。
しかし、現実的な推進にあたって、“義務化”などの手法が電子処方箋にいたってもどこまで可能になるかどうかは疑問を持たざるを得ない。こうした背景を考えると、加算の性急な見直しについては、慎重な議論が必要ではないだろうか。

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