天王星と海王星の「色」のちがい。なぜ海王星の方が青いのか?

【▲2021年にハッブル宇宙望遠鏡によって捉えられた天王星(左)と海王星(右)の外観。天王星は明るい北極付近にスポットライトが当たっている。海王星には北半球に「暗班」が見られる(Credit: NASA, ESA, A. Simon (Goddard Space Flight Center), and M. H. Wong (University of California, Berkeley) and the OPAL team)】

天王星と海王星には、質量、サイズ、大気組成など、多くの共通点があります。ところが、その外観(色合い)はかなり異なっています。可視光で見ると、海王星は豊かで深い紺碧の色合いですが、天王星は淡いシアンの色合いをしています。2つの惑星の色のちがいは、どのような原因によるものなのでしょうか?

新しい研究によると、両方の惑星に存在する凝縮された「靄(もや)」の層は、天王星の方が海王星よりも厚く、そのため天王星の方がより「白く」見えるということです。もし、海王星と天王星の大気中に靄がなければ、どちらの惑星でも青い光が大気中で散乱し、ほぼ同じように青く見えるはずです。

このプロセスは「レイリー散乱」と呼ばれ、地球上でも昼間の空を青く見せています。レイリー散乱は、主に波長の短い青い光で起こります。散乱された赤い光は、両惑星の大気中にあるメタン分子によって青い光よりも多く吸収されるのです。また、地球では、大気中の窒素分子が光の大部分を散乱させますが、海王星や天王星では、主に水素分子がその役割を担っています。

今回の研究は、オックスフォード大学の惑星物理学教授であるパトリック・アーウィン(Patrick Irwin)氏が率いる国際研究チームが、海王星と天王星の大気中に存在するエアロゾル層を説明するために開発したモデルに基づいています。

【▲この図は、研究チームによってモデル化された、天王星(左)と海王星(右)の大気中の3つのエアロゾル層を示している(Credit: International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA, J. da Silva / NASA /JPL-Caltech /B. Jónsson)】

このモデルは、高さの異なる3つのエアロゾル層で構成されています。色に影響を与える重要な層は、海王星よりも天王星の方が厚い靄粒子の層(エアロゾル-2層)である中間層です。

研究チームは、どちらの惑星でも、メタン氷が中間層の粒子に凝縮し、メタン雪のシャワーとなって粒子を大気の深部へと引き込むのではないかと考えています。海王星は天王星よりも活発で擾乱(じょうらん)した大気を持っているため、海王星の大気の方が効率よくメタン粒子を靄粒子の層にかき集め、この雪を生成しているのではないかと考えられています。そのため、天王星よりも海王星の方が、大気中の霞が取り除かれ、結果として海王星の青色が強く見えるのです。

モデル作成には、ハッブル宇宙望遠鏡によるアーカイブデータが用いられています。さらに、この分光データは、地上にあるジェミニノース望遠鏡やNASAの赤外線望遠鏡による観測データによって補完され、紫外線から赤外線(0.3〜1.0マイクロメートル)までの幅広い波長をカバーしています。

こちらの動画では、本研究での問いかけ「天王星と海王星はなぜ色がちがうのか」について簡単にまとめられています。

なお、このモデルは、海王星では時折見られ、天王星ではあまり検出されない「ダークスポット(暗斑)」を説明するのにも役立つとのことです。

関連:海王星の新たな謎、移動して消えると思われた暗斑が予想外のUターン

Source

  • Video Credit: Hubble ESA
  • Image Credit: NASA, ESA, A. Simon (Goddard Space Flight Center), and M. H. Wong (University of California, Berkeley) and the OPAL team、International Gemini Observatory/NOIRLab/NSF/AURA, J. da Silva / NASA /JPL-Caltech /B. Jónsson
  • ESA hubble / 論文

文/吉田哲郎

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