在日外国人差別の実態に迫るドキュメンタリー映画「ワタシタチハニンゲンダ」

技能実習生や難民申請者、入管収容者ら在日外国人差別の実態に迫ったドキュメンタリー映画「ワタシタチハニンゲンダ」が5月28日から大阪市淀川区の第七藝術劇場で公開された。監督は在日朝鮮人2世のノンフィクション作家、高賛侑(コチャニュウ)さん。朝鮮学校の歴史と現状を描いた「アイたちの学校」(2019年)の続編ともいえる作品で、高さんは「外国人差別解消を求める世論の喚起に寄与したい」と話す。(新聞うずみ火 栗原佳子)

「マジョリティにこそ見てほしい」と高さん=大阪市生野区

高さんは1980年代から中国や旧ソ連、アメリカなど各国で定住コリアンを取材。日本と比較し、「日本の状況はひどい差別の段階ではなく、排他主義に基づく異常な差別」だと実感した。さらに、多様なルーツを持つ在日外国人にも取材を広げる中で、民族組織もなく、権利を守る闘いの術もないニューカマーの苦悩を思い知った。

ただ、技能実習生や難民申請者を撮影した場合、本人に不利益が及ぶのではないかという不安があった。もんもんとリサーチを重ねる中、昨年2月、大阪で難民支援に取り組む「社会活動センター・シナピス」と出会ったことが映画化への大きな一歩となった。

7人の難民申請者が取材に応じてくれた。入管施設の被収容者が入管という国家機関から暴言、暴行を受ける。病気になっても放置され、命が危険な地へ強制送還される。心身ともに傷つけられた人々がハンストや自殺未遂を繰り返し、毎年のように死者が出る。証言を撮りながら戦慄した。「集客に不安があったのですが、もう観客動員はどうだろうと、この事実を伝えなければと決心が固まりました」。名古屋入管でスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが死亡する事件が起きたのはその1カ月後だった。

当事者、支援者、弁護士らが生々しい証言をつなぐ。技能実習生がさらされる差別的な言動や暴力が記録された映像、入管内の暴言や暴行などの映像もある。支援団体や弁護士を通じ入管内の衝撃的な映像を入手できた。未公開のものも含まれている。人権侵害に苦しむ当事者たちの共通の叫びをタイトルにした。

高さんは在日外国人に対する差別的処遇の経緯も描写。日本が朝鮮半島を植民地化した1910年にさかのぼり、法や制度がいかに作られてきたかを時系列でたどった。「(日本にいる外国人の処遇は)煮て食おうと焼いて食おうと自由」と法務省の参事官が記したのは65年。日本政府の排外主義はその後、ニューカマーにも適用されていく。

「人権を守る闘いは当事者自身の運動が最も重要ですが、選挙権もないマイノリティーだけの闘いでは限界があります。マジョリティが参加してこそです」と高さん。人権を踏みにじられている実態を広く伝えたいと、数カ国語のバージョンも考えているという。

6月3日から京都シネマ名古屋・シネマスコーレで6月公開。各地で順次公開予定。

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