【特集】新たな街作りへの期待と不安~船橋市海老川上流地区土地区画整理事業~

【特集】新たな街作りへの期待と不安~船橋市海老川上流地区土地区画整理事業~

 千葉県船橋市で始まった新しい街作り「海老川上流地区の土地区画整理事業」。

 関係する住民からは、新しい駅や病院などによる地域活性化への期待が高まる一方で、開発に伴う水害リスクを懸念する声も…。

 都市部のイメージが強い船橋市ですが、中央部や北部などには、開発を制限する市街化調整区域が広がっています。

 中央部から東京湾に注ぐ海老川の上流地区もその一部で、耕作放棄地や、資材置き場などが増え、虫食い的な土地利用を心配する声が高まっていました。

船橋市 松戸徹 市長
「船橋市が将来にわたって活力ある街であり続けるために、海老川上流地区のまちづくりに着手いたします」

 船橋市は2016年、市として、この地区の区画整理事業を支援していく方針を表明。

 地区へ市立医療センターを移転させるなどして、医療・福祉機能をまちの中核とするメディカルタウン構想を打ち出しています。

 2022年に入り、審議会の答申を受け、県は、海老川上流地区を開発が可能となる市街化区域に編入することを決定。

 船橋市は、区画整理事業とその実施主体である「組合」の設立を認可し、区画整理事業が動き出しました。

 地区の面積は、東京ドーム9個分・約42.3ヘクタールに及び、都心直結の私鉄・東葉高速鉄道の新しい駅も整備される見込みです。

海老川上流地区土地区画整理組合 理事長(上流域の住民)
「(昔は)もう見渡す限り田んぼ。稲作が盛んで船橋駅まで見えるくらい」

 上流域の住民で組合の幹部は、区画整理事業が実施されなければ、乱開発を招きかねなかったと話しています。

海老川上流地区土地区画整理組合 理事長(上流域の住民)
「虫食い的に開発が進んで来たというところで、このままだと道路も良くないし、貯水池も設けられずに開発されるので、悪く開発される感じがしていた」

「このまま荒れ地になっていくのは良いと思えなかったので、計画的な開発が進んでいくのは良かった」

 そして、新たな街づくりによる地域の活性化に、期待を寄せます。

海老川上流地区土地区画整理組合 理事長(上流域の住民)
「メディカルタウンという話だったので、医療センターを中心とした街。新しい街、いままでにない街。(地理的に)船橋の中心になっているので、船橋の活性化につながる」

 一方、海老川の流域には、水防法に基づき、洪水浸水想定区域が指定されていて、審議会の答申でも、「海老川流域の治水への影響に関する検討を続け、住民に対し理解いただけるよう説明を重ねること」とする附帯意見がつけられました。

 これを受け船橋市は、区画整理事業に伴う流域への影響を検証する調査を始め、5月には住民説明会を開催。

 参加した住民からは、水害リスクが高まる懸念や積極的な情報発信を求める意見などが出ました。

流域治水の会 船橋 副代表(下流域の住民)
「説明会に参加した人は、(海老川の氾濫で)胸まで水に浸かったとか、自衛隊が救命ボートを出して救出したというのを聞いているので」

 下流域の住民で、「流域治水の会 船橋」という団体の幹部は、区画整理事業に伴う開発で、行き場を失った雨水が海老川に流れ込む懸念を表明、事業の計画変更を含め、上流と下流の住民、双方が納得するような“調整”を市に求めています。

流域治水の会 船橋 副代表(下流域の住民)
「私たちはもうひたすら『全面的にやめろ』とか言うことではなく、安全なものに変えてほしいというところなので、組合の地権者の方たちも、いわば同じ市民同士。自分たちの利益があれば、他の人に迷惑かかってもいいと思っていないと思うので、みんながハッピーになる、100点っていうことはなくても、妥協できるような妥協点を見出すためにできることがあればさせていただきたいし、市にそのリーダーシップをとっていただきたい」

 10年先の新たな街づくりに180億円以上を支援する船橋市は、区画整理事業で整備する調整池によって、地区から海老川に排水する水量を抑制し、「下流への浸水被害が現状より増すことがないようにする」と説明。

 組合に対しても、流域への影響調査の結果がでるまで、着工を見合わせるよう求めています。

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