幻の戦闘機「秋水」 B29対策の切り札 横須賀・記念艦三笠で開発秘話

ロケット戦闘機「秋水」について語る佐久間さん=横須賀市の記念艦「三笠」

 太平洋戦争末期に横須賀で開発が進められた旧日本軍のロケット戦闘機「秋水」をテーマにした講演会が6月26日、神奈川県横須賀市稲岡町の記念艦「三笠」で開かれた。元市議で秋水を研究する佐久間則夫さん(67)が開発秘話や歴史的意義について語った。

 秋水は追浜地区にあった旧海軍最大の航空研究開発拠点「航空技術廠(しょう)(空技廠)」が、同盟関係にあったナチス・ドイツのロケット戦闘機を参考に開発を進めた。時速900キロ近い高速と上昇力に優れ、米軍の爆撃機B29対策の切り札として大きな期待を集めたものの、1945年7月の試験飛行で墜落し、パイロットは殉職。直後に終戦となったため実用化には至らず、「幻の戦闘機」ともいわれる。

 秋水の設計図が積まれた潜水艦は日本到着前に撃沈され、わずかな図面から試作機の製造までこぎ着けた。佐久間さんは技術陣の奮闘に触れながら「夏島貝塚周辺ではロケットエンジンの試験が行われ、海側に向けて噴射された。高度1万2千メートルへの急上昇に耐えられるように搭乗員は空技廠の低圧実験タンクで、気圧の変化に耐える過酷な訓練を重ねた」と解説した。

 空技廠では最盛期は3万4千人が働き、ジェット機や魚雷などの開発も行われた。「空技廠で培われた技術は東海道新幹線や航空自衛隊のジェット戦闘機などに引き継がれている。横須賀の技術が現在も生きていることを知ってほしい」と話していた。

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