西武・滝澤 走攻守でファン魅了 恩師や仲間、期待のまなざし

 プロ野球(NPB)、埼玉西武ライオンズの滝澤夏央選手(18、関根学園高出)は5月13日に育成選手から支配下選手契約され、1軍に昇格し即先発出場を果たすと、それから1カ月半、走攻守でファンを魅了し、躍進を続けている。源田壮亮選手(29)が復帰後は先発から外れているものの、1軍に定着し試合終盤での守備固めや代走で出場している。見守る恩師やチームメートは連日、期待のまなざしを向け、けがなくプレーしてほしいと願っている。

遊撃手として安定感と躍動感に満ちた守備を見せる滝澤選手(6月12日、広島戦)(球団提供)

 50メートル5秒8の俊足でスタート良く塁間を駆け抜け、安定した守備を披露する滝澤選手。躍動感いっぱいのプレーと、爽やかな笑顔で西武ファンのみならず、野球ファンの心をつかんでいる。

 源田選手のけがもあってチャンスが到来し、守備の要、遊撃手で18試合連続先発出場。同点打や猛打賞をマークし、打率は一時3割3分3厘まで上がった。相手に研究されたこともあり打率は下がってきたが、走攻守で高卒育成ルーキーとは思えない高い資質を発揮している。最近は二塁手や三塁手で途中出場し、起用の幅を広げている。

代走で起用され、スタートを切る滝澤選手。俊足は大きなアピールポイント(6月17日、オリックス戦)(球団提供)

◇活躍に呼応し出身チーム躍進

 滝澤選手の活躍に呼応するかのように、かつて在籍したチームも躍進している。幼年野球チーム・三郷タイフーンは県予選で優勝し、8月の高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会に初出場を決めた。5月にチームで応援動画を撮影し、滝澤選手に送るなど先輩を後押ししてきた。

 在籍当時も指揮を執っていた布施修監督(67)は「歴史を塗り替えたぞとLINEを送ったら、電話がきた。子どもたちにご褒美を考えていますと。夏休み後半にチームで応援に行きたい。メンバーの励みになっている。夏央らしく元気にやってほしい」と、教え子の活躍と全国出場というダブルの喜びを受け止めている。

 出身中学の城西中は、同選手が1軍に昇格した頃、時同じくして、直江津中と中郷中との3校合同チームで5月の全日本少年野球大会県予選に出場して初戦勝利を挙げ、ベスト8に進出した。直江津中の宮本幸司監督(42)は前任の城西中時代、同選手と3年間を共にした。

 宮本監督は「技術の高さはもちろん、道具の片付けやグラウンド整備を率先し、一生懸命に取り組む姿でチームを引っ張ってくれた」と振り返り、「チームへのメッセージをお願いしたら、『県大会出場はすごい。気持ちで負けず、いつも通りのプレーを』と返信が来て、大会に行くバスの中でメンバーに伝えた。本人も言っているように、泥臭いプレーでけがなく頑張ってほしい」と思いを話した。

城西中時代、最後の公式戦に敗れた後、グラウンド整備を行う滝澤選手(家族提供)。野球に取り組む姿勢は幼い頃から一途で真摯

◇関根の宝から野球界の宝へ

 関根学園高野球部の安川斉総監督(62)は6月28日の本拠地での日本ハム戦を観戦した。「西武の一流選手の中でプレーしている姿を見ると、つい数カ月前までこのグラウンドで練習していたとは思えないぐらい。先輩にかわいがられ、スタッフの方々にも好かれている。夏央の人間性」とうれしそうに話した。

 滝澤選手は同校で主将を務めた兄の背中を追って進学し、1年春から先発出場した。「守備に関しては教えることはほとんどなかった。守備が好きだし、練習後もノックしてくださいと言ってきた」と振り返り、「疲れやけがが心配。7~9月の暑い時期を乗り切ってくれれば」と願った。

 高校時代のチームメートで主将を務めた田原輝也さん(18、デンカ青海工場勤務)も交流戦を観戦。試合後、しばし歓談したという。「高校時代からうまかったけど、さらにうまくなるんだなと思った。すごいとしか言えない。プロ野球選手だなと感じた。体付きは変わっていたけど、性格は変わっていなくて安心した」と声を弾ませて話した。

 中学時代、最後の地区大会で投手の滝澤と投げ合い、1点差で敗れてから、一緒にプレーしたいと同校に入った。高校の時に「関根学園の宝」と表していたが、「今は全国区。野球界の宝。一ファンとして全力で応援したい」と力を込めた。

 滝澤選手と一緒にプレーした後輩たちも同じ思いだ。二遊間を組んだ増野樹主将(3年)は「一緒に組めて楽しかったし、学ぶことがたくさんあった。昨年夏の日本文理戦で敗れた後、甲子園に連れて行ってあげられなくてごめんと。今年も勝ち進むと準々決勝で文理と当たる。そこまで頑張れよと言われた。自分も夏央さんみたいにチームを引っ張っていきたい」、1年時に三遊間を組んだ近藤晶英投手(3年)は「夏央さんに憧れて富山から関根学園に来た。いつも心配してくれて連絡が来る。ここを選んで、夏央さんと一緒にできて良かった」とそれぞれ話し、先輩の存在や言葉を励みにしている。

昨夏の高校野球新潟大会準々決勝、先発完投も及ばず日本文理に敗れ、悔しさをにじませる滝澤選手(右から4人目、昨年7月23日)。仲間と甲子園を目指した日々は今も心に深く刻まれている

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