ツッパリカルチャーを終焉させたチェッカーズ「俺たちのロカビリーナイト」で原点回帰  自分たちのルーツ “ロカビリー” に立ち戻り、音楽的深化を遂げたチェッカーズ

お茶の間を席捲したチェッカーズのサウンドとは?

1983年にデビューしたチェッカーズのサウンドは、大雑把な枠で考えると 70年代から続く、キャロル、クールス、横浜銀蝿の流れである「リーゼントの似合う軽妙なロックンロール」がウリであった。

もちろん、厳密にはキャロルが初期ビートルズの影響下にあり、切なくもメロディアス、ブリティッシュな匂いを振りまいていたのに対し、クールスはアメリカの音楽の影響が大きい。70年代のロックンロールリヴァイバルの立役者となったシャナナや、ソングライターであるジェームス藤木氏、一時期加入していた横山剣氏のセンスに寄るところの、黒人のR&Bが下敷きになっている。

また、横浜銀蠅は、ダウン・タウン・ブギウギ・バンドのサウンドを踏襲した歌謡曲フレーバーの強いものであった。このように、同じリーゼントとして括るのは多少難しい部分もある。しかし、リーゼントでロックンロールという枠で考えると、チェッカーズも紛れもなく彼らの後継者だった。

しかし、チェッカーズは、アマチュア時代までのリーゼントスタイルをあっさりと捨て、派手なチェックの衣装と、ポストパンク経由、ニューロマンティックの印象も感じられる前髪を垂らした独特のヘアスタイルで、一気にお茶の間を席捲した。

つまり、これが、リーゼントをイメージするようなツッパリカルチャーの終焉であり、時代はよりキュートなものを受け入れるようになっていったのだ。

精神性を原点回帰させた「俺たちのロカビリーナイト」

リーダーの武内享氏は、デビューの頃、インタビューで「ビートルズもアイドルからそのキャリアをスタートした」という旨の内容をよく語っていた。おそらく、アイドルという立ち位置から、自分たち独自の音楽性を確立させ、音楽業界に革命を起こそうという決意表明だったのかもしれない。

彼らは1985年7月5日に7枚目のシングル「俺たちのロカビリーナイト」をリリース。ここから、それまでの衣装を脱ぎ捨て、自分たちのルーツであるロカビリーのスピリチュアルな部分に原点回帰した。

そして1987年5月2日に発売された初のセルフプロデュースアルバム『GO』(ヒットナンバー「NANA」を収録)では、当時親交の深かったザ・モッズの森山達也氏をゲストに迎え、60年代のブリティシュビートを基盤にした硬派なロックンロールアルバムを作り上げた。

藤井郁弥、藤井尚之が見せたロックンローラーとしての姿

当時の彼らの動きを思い出してみると、ボーカルの藤井郁弥氏は、森山氏とよく行動を共にし、西麻布界隈のクラブに姿を見せていた。担当していたオールナイトニッポンでは、いわゆるヒットナンバーを取り上げることもなく、UKで盛り上がりを見せていたサイコビリーばかりをかけていたように思う。

サックスの藤井尚之氏がザ・モッズのシークレットライブにゲスト出演したのもそんな時期。確か、1986年の年末だったと思う。場所はロンドンナイトでお馴染みの新宿ツバキハウス。オールカバーのシークレットライブだった。「ルート66」や「ビー・マイ・ベイビー」「ダディー・ローリング・ストーン」などにブリティシュビート発パンク経由の良質なエッセンスをちりばめた自然体の音楽の深みと不良の匂いがする素晴らしいステージを見せてくれた。

ここにサックスを構える尚之氏も、デビュー当時の面影とは全く違ったミュージシャン然とし、ザ・モッズの面々と同じステージに立っても全く違和感がなかったように記憶している。思えば、この時期は『GO』のレコーディングに取りかかっていたのではないだろうか。そんなメンバーの日常が色濃く反映されたアルバムであったとも言える。

音楽的深化を遂げ保ち続けたチェッカーズの人気

アナーキーの仲野茂氏が、自らの音楽活動を振り返り、「俺たちが音楽的になればなるほど、レコードが売れなくなる」といったコメントを発していたインタビューが自分の中で鮮明に残っているのだが、そのようなミュージシャンはアナーキーだけではない。

トゥマッチモンキービジネスな音楽業界でどれだけ多くの優れた才能を持つミュージシャンが苦境に立たされていたのかわからない。そんな中チェッカーズは、これ以降もメンバーそれぞれの手でソングライティングを手掛けるようになり、音楽的深化を続けながらも、高い人気を保っていた。

後期はブルーアイドソウルの印象が強い洗練された楽曲を多く発表。享氏の決意表明を実践し、いまだ多くの人に愛され、80年代を象徴するバンドとして語り継がれている。

2017年4月29日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 本田隆

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