第4回:伊藤銀次のプロデュースイベント「BRITISH COVER NIGHT」汐留PITで開催!  アースシェイカー西田昌史が! 山口冨士夫が! 聴かせてくれた英国ロック

『第3回:伊藤銀次のプロデュースイベント「BRITISH COVER NIGHT」汐留PITで開催!』からのつづき

アースシェイカー西田昌史が聴かせたロック魂

ピチカート・ファイブのおしゃれでファンキーな解釈の「シーズ・ノット・ゼア」のカバーでさらに盛り上がってきた『British Cover Night』はいよいよ後半戦に。ここで主催者の僕もなにかイギリスもののカバーを1曲ということで、選んで歌ったのは、10CCの名曲、「I’m Not In Love」。ここからは、ゴリゴリのロッカーたちが登場してくるということで、僕は、嵐の前の静けさ(笑)というか、あくまでほっと一息、ちょっと休憩室的な選曲でいくことにしたのだった。

その後半戦のトップバッターは、当時日本のハードロックシーンをラウドネスと共に牽引していたアースシェイカーのスーパーヴォーカリスト、マーシー(西田昌史)。

まずストーンズの「ブラウン・シュガー」で、ど真ん中ストレートに彼のロック魂をぶつけてきた。そしてもう1曲は一転して、ピート・タウンゼントの自伝的な映画「トミー」の中で披露された切ない名曲、ザ・フーの「シー・ミー・フィール・ミー」。

基本的に選曲はこの日の出演アーティストにお任せ… だったこのイベント。「ブラウン・シュガー」といい、この曲といい、ヘヴィーメタルな世界のマーシーが選んでくれたことで、きっと彼もストーンズやフーにしびれてロックを始めたんじゃないかなと、彼のブリティッシュロックへの深いリスペクトを感じてグッときたね。

これが縁でその後、1990年4月に日比谷野外音楽堂で開かれた『ロックの生まれた日』という、当時の東芝EMI所属の全ロックアーティストがそれぞれチームを組んで出演した一大イベントで、ちわきまゆみさん、ブラボー小松君、泉水敏郎君たちと共に、僕がマーシーといっしょに “VIVA” というユニットを組むことになる伏線がここにあったような気がするね(「ロックの生まれた日」についてはまた別の機会にでも…)。

若者からの支持も高かった山口冨士夫との出会い

そして続くアーティスト、山口冨士夫がステージに上がると、客席の何人かの若い観客から「フジオー!」の声がかかったではないか。山口冨士夫といえば、1960年代のGSブームの時、“ザ・ダイナマイツ” のメンバーとしてデビュー、やがて70年代に入って、その後伝説となったロックバンド、“村八分” を結成して活躍した超ベテラン。

そんな彼が若い音楽ファンに支持されているのを目の当たりにすることができたのはとても意義深くうれしい出来事だったね。やっぱり出てもらった甲斐があったというものだ。

実は僕が彼と会ったのはこれが初めてではなかった。僕がまだ大阪にいて “ごまのはえ” を結成する前、1971年頃、村八分のメンバーだったドラマーの上原 “ユカリ” 裕君から、村八分が大阪でリハーサルをするので僕のアンプを貸してもらえないか… という電話があった。まだこの当時は、今のような練習スタジオがなかったので、どこか場所だけ借りてそこでバンド練習しようというわけだった。「OK、いいとも!」と運んで行った僕のギターアンプでギターを弾いたのが山口冨士夫さんだったというわけ。

その時に目の前で見た彼の日本人ばなれしたギタープレイには目を見張ったね。実は彼は僕と同年代なのだけれど、僕がまだアマチュアのロック好き高校生だった1967年に彼はすでにダイナマイツとしてデビューしていた。

彼らのデビュー曲「トンネル天国」は数あるGSの中でも飛び抜けてワイルドで不良っぽくて、本場のストーンズやアニマルズに近い雰囲気を出していて、「おぉ!がんばってるな!」と、応援したくなったバンドだった。そんな彼が僕のアンプでいま目の前で演奏しているなんて、ちょっと信じられない出来事だったね。そしてさらに不思議な運命がめぐってきて、こうして『British Cover Night』で共演できるなんて。音楽の神様には、ただただ感謝感謝なのだ。

山口冨士夫に感じたアーティストのオーラ

僕の予想通り、冨士夫さんのステージは、この日の出演者の中で一番、アーティストとしてのオーラを感じさせるものだった。彼がギターを弾き歌ってくれたのは、トロッグスの「恋はワイルド・シング(Wild Thing)」のジミヘン・ヴァージョンとブラインド・フェイスの「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」。

いやぁ、すごかった! 僕がこのイベントに求めていた様々な英国ロックの解釈のうち、最も人の心の深部にひそむドロドロとした世界を見事に表現してくれて、このイベントにシリアスさを加えてくれた。

サンキュー! 冨士夫ちゃん。すばらしかったよ!

そして、次々と登場するアーティストたちが、これまであまり表明する機会のなかった、それぞれの “ブリティッシュロック愛” を思い切ってオーディエンスにぶつける『British Cover Night』も、いよいよ最後のアーティストの登場。

大トリを飾ってくれたのは、1960年代にいち早くビートルズやストーンズ、アニマルズなどの英国ロックサウンドをとりいれたオリジナル曲を演奏していた “ザ・スパイダース” の頭脳、ムッシュかまやつ!!

…… おっと、ここで時間となりました。そのレポは次回のココロなのだ!

カタリベ: 伊藤銀次

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