「今までで一番厳しい」北部病院、病床ひっ迫 社会とのギャップ、「病院だけゼロコロナ」疑問視も

 新型コロナウイルス感染拡大で、北部の基幹病院である沖縄県立北部病院の病床が逼迫(ひっぱく)している。現場の医療従事者は「けがや病気をしても入院できるかどうかは難しい。今まで一番厳しい状況だ」と危機感をあらわにする。医療現場でコロナとの戦いが続く一方、社会経済活動が活発になっていることに「ギャップ」を感じている医療従事者もいる。同病院が13日までに取材に応じた。

 北部地域で急性期の患者を受け入れる重点医療機関は、北部病院と北部地区医師会病院がある。北部病院ではコロナ病床の占有率が8~9割、一般病床も満床に近い状態が続く。社会経済活動の再開により、傷病者や熱中症が疑われる患者の入院が相次いでいる。

 新型コロナを担当する永田恵蔵医師によると、少しでも重症化リスクのある人は積極的にコロナ病床に受け入れるようにしている。北部地域は広範囲で人口当たりの医師の数も少なく、医師が複数の高齢者施設などの嘱託医を掛け持ちしている場合がある。永田医師は「名護から離れた地域の高齢者施設などでクラスターが発生したり、重症者が出たりすると、北部の医療全体に影響が出る」と説明する。

 同時に、少しでも空床にするため、回復の傾向がある人を早めに地域のクリニックや回復期病棟、高齢者施設に移すようにしているという。永田医師は「ギリギリの中でやっている。自転車操業状態だ」と説明する。

 北部地域では観光客が増え、クルーズ船の寄港やイベントの再開など人の流れが活発になりつつある。「今はまるでコロナがないような雰囲気になっている」と声を落とす。医療従事者は自身が感染しないよう気を配って生活している。

 永田医師も2020年3月以降、家族以外との会食も片手で数えるぐらいしかないという。「世間とのギャップを感じてしまう。医療、介護、福祉の現場だけ対応を強いられているのではないか」とため息交じりに語った。

 久貝忠男院長は「社会を動かしながらも、病院ではゼロコロナを目指すのは矛盾を感じる。ただ医療は提供し続けなければならない」と話す。少しでも重症者を減らし医療現場の負担を減らすため、「行政はワクチン接種を推進してほしい」と強調する。「この2年間でコロナに対する医療側もノウハウを身についた。もう少ししたら(コロナは)明けるはず」と自らに言い聞かせるように語り、前を見た。

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