「アベ政治」を振り返る…「森友問題」財務省文書改ざん発覚 誰の指示だったのか

新聞うずみ火」の過去の記事から「安倍政治」を振り返る。「森友学園」をめぐる財務省の決裁文書改ざん問題。焦点は、誰の指示なのか、何のために書き換えが行われたか。破棄されたと言われた「森友文書」の一部を公開させた神戸学院大教授(憲法学)で「政治資金オンブズマン」共同代表の上脇博之さんに話を聞いた。(新聞うずみ火2018年4月号)

神戸学院大教授の上脇さん=2018年3月、神戸市内

2018年3月12日、財務省は森友学園への国有地売却に関する14枚の決裁文書が300カ所以上も書き換えられていた事実を認めた。

言うまでもなく、一度、決裁された公文書を書き換えることは犯罪である。「虚偽公文書作成罪」、または「公文書変造罪」となり、いずれも懲役10年以下の罪に問われる。さらに、国会に改ざん後の文書を提出したことも問題となり、実質的な国会審議を妨げたとなると「偽計業務妨害罪」も加わる。

麻生財務大臣は「当時の理財局の一部の職員。責任者は佐川」と述べ、「佐川の国会答弁に合わせて書き換えた」と主張。文書改ざんはあくまで財務省の問題として、当時の理財局長だった佐川宣寿(のぶひさ)・前国税庁長官に責任を取らせて幕引きを図ろうとしているのではないか。

だが、上脇さんは「佐川答弁に合わせて文書を改ざんしたとは思えない」と指摘する。

「公文書は行政の意思決定のプロセスを表している。公文書は民主主義の基盤。それを破棄したり改ざんしたりすることは民主主義を否定すること。しかも国民にとって知的財産であり、それを改ざんするのは国民への冒とくです。そんなことを一官僚が独断でやれるわけがない」

では、誰が、何のために改ざんしたのか。

上脇さんは、安倍首相が17年2月17日の衆議院予算委員会で行った――「私や妻が関係していたということになれば総理大臣も国会議員も辞める」という答弁が官僚に対するメッセージだったと見ている。

「安倍首相や昭恵夫人が関わっている証拠があればどうにか処理しろというメッセージ。官邸側が『どうにかしろ』と言ったとしたら強制であり、『安倍首相がこう答弁したからわかるよな』と言ったとしたら忖度の強制。官僚が自主的に忖度したのではなく、強制か間接的に促したかのどちらかではないでしょうか」

1週間後の2月24日の衆院予算委で、当時の佐川理財局長が「(森友学園との)交渉記録は残っていない」「廃棄した」と答弁している。

「なぜ、そんなウソの国会答弁をしなければならなかったのか。誰を守ろうとしたのか。佐川氏の答弁は官邸側とすり合わせがなされたと見るべきで、この時点で官邸側は問題となるような文書は破棄し、破棄できないものは改ざんするよう直接、または間接に指示した――そう考えた方がスムーズ。『総理のご意向』文書のように、加計学園問題でやっていることを森友問題でもやっている可能性は高いのではないか」

それゆえ、昭恵夫人の名前も削除されていた。

安倍昭惠夫人が関わった文書も削減されていた

「首相は、昭恵夫人が関わっていることを知っていた。逐一報告を受けているはずです。首相が作りたいと思う小学校を、森友学園の籠池泰典前理事長が作ろうとした。だから、昭恵夫人が『一人でやらせてすみません』と言ったと、籠池前理事長の証人喚問の中で明らかにされた。つまり、昭恵夫人は首相の『分身』なのです」

改ざん前の公文書について、上脇さんは経過の記述が詳細だったことに注目している。

参考記事:「森友問題の本質は国有地売却と小学校認可」木村真・豊中市議

「いかに近畿財務局の職員はやりたくないことをやらされているか、通常では考えられない契約を強いられているか、克明に記録した。民主主義を理解していた職員がいたから詳細な記録を残そうとした証だと思う。近畿財務局は、改ざんについても本省からやらされたのでしょう」

安倍政権に対して、上脇さんは「そもそも民主主義をわかっていない」と指摘する。

「公文書を廃棄したり、改ざんしたりするのは民主主義の否定。民主主義を否定する首相のもとで、民主主義を尊重していた官僚が改ざんをやらされてしまった。憲法に基づく政治を軽視する首相を生むと、とんでもないことになる。国民は学習する必要がある。相撲で言えば、明らかに寄り切られているのに土俵を勝手に変えている。それは許されないと、安倍内閣の支持者も声を上げることが大事です」

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