ロボットもサブスクで利用する時代がやってくる―RaaSのインパクトとは

スマート工場にXR、ローカル5Gなど、DXで大きく変わる製造業。その姿を正確に掴むために必要なキーワードを一挙に解説。第7回目は、「RaaS」について解説します。

近年、モノの提供からサービスの提供へとビジネスモデルの転換が進むなか、ソフトウェアの「SaaS(Software as a Service)」、モビリティの「MaaS(Mobility as a Service)」などの言葉が一般的になってきました。このような、「aaS(アズ・ア・サービス)」と称されるサービスで、今、ロボットを利用時間や台数に応じて課金して利用する「RaaS (Robot as a Service) 」が注目されています。RaaSは、モノづくりにどのようなインパクトを与えるのか、見てみましょう。

初期費用を抑えるRaaSで、中小企業でも最新ロボットを活用可能に

これまで、ロボットの導入といえば、ロボット本体を購入し、ロボットを制御する仕組みを自社内に構築し、運用するという形が一般的でした。しかし、当然ながら高機能なロボットは高額です。大きな初期投資をした後で、ロボットの台数を減らしたいと思っても、そのお金は戻ってきません。また、社員がロボットを運用できるように、トレーニングを行う費用や時間も無視できません。このような大きな初期投資は、特に中小規模の企業にとっては、ロボット導入の大きな妨げだったのです。

一方、RaaSは、ロボット本体のみならず、運用に必要な制御システムや遠隔監視プログラム、メンテナンスやソフトウェアのアップデートといった機能を、インターネット上のサーバーからサービスとして利用するモデルです。そのため、従来のオンプレミスでのロボット導入と比較して、初期費用を大きく抑えることが可能です。RaaSは、月額定額課金のサブスクリプションモデルや、使用量に合わせた従量制の課金モデルなどで提供されるため、作業量の増減に応じてロボットを追加することも容易です。繁忙期だけロボットを利用したい、というようなこともできるでしょう。人とロボットが協働して作業を行うような現場では、人間の最低賃金と、RaaSで利用するロボットの “時給” を比較して、どちらを採用するか決めるような時代ももうすぐやってくるかもしれません。

RaaSなら、常に最新テクノロジーが利用可能

RaaSであれば、常に最新モデルが低価格で利用できることも魅力です。ロボットを制御するソフトウェアや、クラウドサービスの機能がアップグレードされれば、すぐに利用することができます。また、このようなアップデートは、利用者ではなく、サービスを提供するベンダーによって行われるため、運用負担もありません。

ベンダーにとっても、ロボットの稼働状況に関するデータを入手できるというメリットがあります。このようなデータを分析することにより、ロボット本体やサービスの改善につなげることができるからです。ユーザーのニーズに応える新サービスや機能を開発するためには、現場のデータは非常に重要です。ロボットから得られたデータから、工場の在庫量や出荷動向を把握し、生産企画の改善を提案する、というような新しいビジネスも生まれるかもしれません。

成果報酬型のRaaSも登場

近年は、月額課金制や従量課金制に加えて、成果報酬型とも呼ぶべきモデルでRaaSを提供する企業も登場しています。中小企業をターゲットにしたRaaS事業を展開する米国のinVia Robotics社は、ロボットが商品をピッキングし、所定の場所まで運ぶごとに課金する仕組みを採用しています。導入企業の業務が効率化し、生産性が向上すれば、inVia Robotics社の利益も増える仕組みです。

日本で、農作物の収穫ロボットをRaaSで提供するInaho社は、市場価格を参考に「収穫高×一定の割合」で利用料を請求しています。ロボットの台数や稼働時間ではなく、収穫量に応じた価格体系のため、ロボットの導入が、農家の経営を圧迫することがありません。このような斬新な仕組みが登場しているのも、RaaSが中小規模の企業に注目される理由でしょう。

ロボットの進化で、RaaSの世界はさらに広がる

今後、ロボットが実行できる作業が増えていけば、例えば、“平日は工場でピッキング作業を行い、週末は料理のデリバリーを行う” ようなロボットが登場するでしょう。ロボットが時給で働き、副業もこなす。そんな未来を実現するためには、必要なときに、必要な期間だけ、必要なロボットを使用できるRaaSの仕組みが不可欠なのです。

サブスクリプション方式のソフトウェアを通じて利用された産業用ロボットの数は2016年の4,442台から、2026年には130万台に増加し、RaaSベンダーの売上は、同期間に2億1,700万ドルから340億ドルに迫る規模に急増するという予想もあります。

製造業や医療、物流などの現場での活用が期待されるRaaSの進展には、今後も注目です。

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