自閉スペクトラム症の傾向があるのはどんな子?1歳6か月ごろに見られる3つの特徴

子どもの成長度合いはそれぞれですが、ほかの子と違う点や気になる特徴を見つけたとき、もしかして何か障害があるかも…と感じることがあるかもしれません。インターネット等では「逆さバイバイ」「クレーン現象」などの行動を、自閉傾向のある子の特徴として挙げられていることがあります。この記事では、自閉スペクトラム症が気になる方に向けて、自閉スペクトラム症のある子に見られる特徴や、今できることについてお伝えします。

自閉スペクトラム症は、生まれつきの脳の機能不全

自閉スペクトラム症は、子どもが持って生まれる発達障害の一つです。生まれつきの脳の機能不全によって見られ、育て方や環境によって起こるものではありません。

初めてこの障害名を聞いた方や、障害当事者との関わりがなかった方は「自閉」という言葉のイメージから「心を閉ざす障害」というイメージを持つかもしれませんが、それは違います。コミュニケーションに困難を抱えている子もいますが、自ら心を閉ざしているわけではありません。

また、同じ自閉スペクトラム症のある子でも、一人一人は異なった性格で、障害名でひとくくりにはできません。

自閉スペクトラム症のある子は、しばしば親にとって「育てにくい」と感じさせる特徴を持っています。しかし、その特徴を理解して、専門家の助言を受けながら関わり方を変えていけば、親の負担感を減らすことができます。また、子どもにとっても、過ごしやすい環境を用意することが可能です。

自閉スペクトラム症の傾向がある子に見られる特徴

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ここからは、1歳6か月ごろで自閉スペクトラム症の傾向があるとき、見られる特徴をお伝えします。ただし、当てはまる全ての子が自閉スペクトラム症ということはありません。また、現段階では診断できない、あるいはいずれ発達が追いつく子もいます。

しかし、自閉スペクトラム症に見られる特徴を知っておくと、専門家の助言を受けるきっかけになる場合があります。「今後の育児のために知っておく」という気持ちで確認してみてくださいね。

視線が合わない、返事をしない

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  • 人と視線を合わせようとしない
  • 声をかけても振り向かない
  • 人に関心を示さない

1歳6か月ごろの発達段階の目安として「名前を呼ばれたら振り向く」というものがありますが、自閉スペクトラム症の傾向がある子の場合、名前を呼ばれても振り向かない場合があります。

声を掛けても親のそばに戻ってこないため、見守りに苦労することがあるかもしれません。

言葉が出ない、クレーン現象がある

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  • 言葉が話せない、発語に遅れがある
  • 指差しなどのジェスチャーがわからない
  • 親の手をクレーンのように使って物を取らせる(クレーン現象)

1歳6か月ごろでは、意味のある単語が2~3個出ていないとき「言葉の発達に遅れがある」と考えられます。自閉スペクトラム症の傾向がある子は発語が遅れやすく、健診などで指摘を受ける場合があります。また、発語だけではなく言葉の理解が進みにくい子もいるようです。

自分が感じている不快の内容や、それをどうして欲しいかを周囲に伝えることができず、かんしゃくを起こしてしまうことがあるかもしません。

行動としては他に、親の手をクレーンのように使って物を取らせる「クレーン現象」、自分側に手のひらを向けてバイバイをする「逆さバイバイ」なども挙げられますが、これらの行動がある子の全てが自閉スペクトラム症というわけではありません。

特定の物事への強いこだわり

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  • 好き嫌いが多いなど興味の偏り
  • 車のタイヤ、扇風機など回るものを好む

特定の物事への強いこだわりが見られるといわれています。例として、ミニカーのタイヤが回っている様子をずっと見ている、同じおもちゃを規則的に並べるなどの行動が挙げられます。そのとき、使っていたおもちゃをほかの子に取られるとパニックになることがあります。

きっかけはささいなことでも、本人の独特のこだわりが崩されたように感じたとき、興奮や強い不安につながってしまうことがあるようです。

育て方の工夫は、専門家の力を借りて

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自閉スペクトラム症の子の特徴は、親にとってはたびたび育てにくく感じ、本人も成長につれ、生活上の困り感を抱えることもあります。そんなときこそ、専門家の助言を受けながら子どもの特性を理解し、困り感を軽くする環境を整える、あるいは具体的な困りごとを解決する方法を見つけていくことが大切です。

子どもに合った関わり方を知り、問題となる行動をしなくて済むような方法を見つけられると、親子双方が楽になります。

1歳6か月ごろの段階では自閉スペクトラム症の診断ができないケースが少なくありませんが、診断がなくても自治体の発達相談や、発達外来の受診は可能です。気がかりなことがあれば、まず相談してみましょう。

出典:地方独立行政法人山梨県立北病院「発達障害」([(https://www.ych.pref.yamanashi.jp/kitabyo/heart/1281/)2021年4月28日最終閲覧)

出典:障害保健福祉研究情報システム(DINF)「発達障害と自閉症のリハビリテーション」([(https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n252/n252_01-01.html)2021年4月28日最終閲覧)

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監修:三木 崇弘
フリーランス児童精神科医

兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒、東京医科歯科大学大学院修了(医学博士)、早稲田大学ビジネススクール在学中。

愛媛県内の病院で初期研修・小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。
愛媛時代は保護者との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。
子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。

2019年4月よりフリーランス。“問題のある子”に関わる各機関(クリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、児童自立支援施設、保健所など)での現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動をしている。
知的障害支援「あいプロジェクト」代表。

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