【滋賀】高校野球 近江/プロ大注目の絶対的エース・山田陽翔(後編)

 高校野球の第104回全国選手権滋賀大会。25日に準々決勝4試合が行われる。

 センバツでは代替出場ながらも準優勝を果たした近江。このチームの絶対的エース・山田陽翔の魅力に迫る。(全2回の後編)

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闘争心とスター性を備えたエースが、今度こそ滋賀県に優勝旗を持ち帰る

 そんな山田に春の近畿大会で変化が見られた。1回戦の奈良大附戦は先発の山田が6回まで投げて、7回から左腕の星野世那に継投するというのが当初のゲームプランだった。だが、リードは3点しかなく、7回の奈良大附の攻撃は二番からの好打順。油断できない試合展開に多賀監督は山田に「もう1イニング行くか?」と判断を委ねたが、山田は「星野なら行けると思います」と返したという。星野を信頼していると同時に夏に向けて他の投手の成長を促したいという想いもあった。その姿を見た多賀監督は「監督の気持ちですよね。一選手の気持ちじゃない」と感心しきりだった。

 「本気で日本一を獲りたいと思っている子が初めて入学してくれたという感じが私は受けているんですよね。勝負に対する執念を一番感じる子だし、強い相手に向かって行くときの彼の闘争心はケタ違いのものがあると思います。だから強豪を倒せるエネルギーみたいなものを周りの人間にも与える。そういう凄い影響力がある子だと思いますね」

 多賀監督が山田のことについて語る時はいつも嬉しそうだ。能力、人間性ともに申し分ない選手に出会えたことに喜びを感じているのだろう。30年以上のキャリアがあるベテラン監督にここまで思わせるのだから大したものだ。彼に匹敵する能力の持ち主は全国を探せばいるかもしれないが、これだけのカリスマ性を持った選手にはなかなか出会えないだろう。

 左足の負傷と連投の疲れから本調子でなく、3回途中4失点で降板したセンバツの決勝、右足が攣って、6回途中で降板した近畿大会と今春に実現した2度の大阪桐蔭戦はいずれも不完全燃焼に終わった。だが、それも夏に向けて描かれたストーリーの序章に過ぎないのではないかと感じさせられる。圧倒的主人公感の漂う山田のラストサマーはどんな結末を迎えるのか。「滋賀県から日本一」を目指す男の生き様をしっかりと見届けたい。
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山田陽翔(近江)
やまだ・はると/3年/投手/175㎝、78㎏/右投右打

山田陽翔(近江)

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