自治体ごと異なる稼働時期 学校のエアコン事情  子どもの様子確認して運用を

教室天井に設置されたエアコン設備。新型コロナ対策で窓を開けながら利用している=長崎市(写真は本文と関係ありません)

 「連日、真夏日、熱中症警戒レベルが続いていますが、学校がクーラー(冷房)を使わせてくれません」。長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」のLINE(ライン)に6月半ば、小学生と中学生の子どもがいる女性から学校の対応を疑問視する声が届いた。いまや長崎県内の学校の教室のほとんどでエアコンが設置されているが、実際にどう運用されているのか調べてみた。
 ■「目まいがする」
 女性はナガポスへの投稿で「体育の授業の後は体が熱い上、マスクもしているので、目まいがすることもあるそうです。クーラーを入れてほしいと訴えても、まだ6月だからとか、許可がいるという理由でつけてくれないそうです」と子どもと学校側とのやりとりを紹介。「節電も必要ですが、子どもたちが暑いと訴える時は6月でもクーラーを入れてほしい」と訴えた。
 文部科学省によると、県内公立学校の普通教室のエアコン設置率は2020年9月時点で、小中学校99.9%、高校89.3%、特別支援学校99.7%。
 17年時点では小中学校での設置率は1割に満たない状況だった。政府が18年に学校へのエアコン設置を後押しする特例交付金を創設したことにより、全国的に導入が進んできた。
 ■適温「28度以下」
 では、どのような基準で運用されているのか。文科省は18年、学校環境衛生基準を改正し、夏場の教室の適温基準を「30度以下」から「28度以下」に変更。一方で温度のみで判断せず、湿度など他の環境条件や児童生徒の健康状態を観察した上で適切な措置を講ずるように求めている。
 エアコンの稼働時期は自治体によって異なり、例えば長崎市教委は「6月1日~10月10日」、佐世保市教委は「6月1日~9月30日」を目安として設定。県教委は県立学校について「7月1日~9月中旬」を原則としているが、今年は気温の推移などから6月下旬には各学校に適宜利用するよう連絡した。
 最終的にエアコンのスイッチを入れるか否かは各学校の判断になる。長崎市のある小学校は6月13日ごろから稼働させた。新型コロナウイルス感染対策で、窓を開けて常時換気する必要もあるため、早めの対応を決めた。「小さい子ほど熱中症のリスクは高い。新型コロナ対策にも気を配りながら熱中症を防ぎ、児童に授業に集中してもらうため」と校長は言う。
 ■ちゅうちょも
 ただ、学校によってはあまりに早く稼働させると、暑さに体を慣れさせることができないと、ちゅうちょする声も。教室の暑さ対策ではエアコンと扇風機を併用する方法もあるが、「羽の回転音が気になる」と授業によっては敬遠されるケースもあるという。
 今年は異例の早さで梅雨明けし、本県でも熱中症警戒アラートが連日発令されている。消防庁によると、7月10日までに県内で338人が熱中症で救急搬送され、そのうち少年(7歳以上18歳未満)は49人。場所では住居が多いものの、教育機関でも16人が発症している。
 猛暑が新たな自然災害ともいわれる中、エアコンは児童生徒の命と健康を守る不可欠な設備となっている。コロナ対策のマスク越しで表情を読み取るのが難しくなっているだけに、子どもたちに声かけをして「体感」を確認したりしながら、エアコンを積極的に利用していくことが求められそうだ。


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