横浜の「山手133番館」、修復が完了 10月には見学会など開催

建物の修復が完了した「山手133番館」=横浜市中区

 空き家だった「山手133番館」(横浜市中区)の建物の修復が6月末、完了した。購入し保全に当たった老舗洋菓子店モンテローザを経営する「三陽物産」(同区)の山本博士社長(52)は「できる限り創建当時の姿に戻すことにこだわった。良さを実感してもらい、今後より多くの古い建物が残ってほしい」と話す。10月1日には同館初披露の見学会とリードオルガンの演奏会が開かれる。

 修復工事は昨年6月から始まった。市の歴史的建造物に認定され助成を受けられたことから、耐震補強に最初に着手。いざ工事に入り壁をはがしてみると、木が腐るなど想像以上に建物が傷んでいた。木材が高騰した影響も加わり費用はかさんだ。

 時間もかかったが、山本さんは毎日のように現場に足を運んだという。「いつも10人以上の一流の職人が働き、修復していた。さまざまな困難を乗り越え、毎日毎日少しずつよみがえっていく過程が楽しかった」と振り返る。

 修復工事で心がけたのは「できる限りオリジナルの状態に戻すこと」。外観の復元や耐震補強は、近代建築の修繕を数多く手がけてきた1級建築士の兼弘彰さん(同市保土ケ谷区)が担当した。

 例えば外壁。使われていた壁を削るなどして元の素材や色を判明させ、再現した。一部新しくした照明器具は時代考証をして取り入れた。現在国内では造られていないというフランス瓦は、使っていたくぎを全て抜いて瓦を洗浄し、再活用した。主屋の瓦は3割ほど割れてしまっていたので、港北区内の市認定歴史的建造物から譲り受けた。それでも足りない枚数については愛知県の専門業者に特注したところ、戦前に造られた瓦の型を見つけて納入してくれたという。

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