印象的な輸送機「スーパーグッピー」NASA新型ロケットの部品を輸送

【▲ NASAマーシャル宇宙飛行センターに隣接するレッドストーン陸軍飛行場へ飛来したスーパーグッピー。2022年8月10日撮影(Credit: NASA/Charles Beason)】

こちらは現地時間8月10日、米国アラバマ州ハンツビルのレッドストーン陸軍飛行場に到着したアメリカ航空宇宙局(NASA)の輸送機「スーパーグッピー(Super Guppy)」です。この日、スーパーグッピーはNASAの新型ロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」の部品をフロリダ州のケネディ宇宙センターからマーシャル宇宙飛行センターへ輸送するため、マーシャル宇宙飛行センターと同じレッドストーン兵器廠内にある同飛行場へ飛来しました。

スーパーグッピーは、1940年代に開発されたボーイング社製の輸送機「C-97」をベースに開発された特殊な輸送機です。最大の特徴は背負うように設けられた機体上部の貨物室で、内径はおよそ25フィート(7.62メートル)、容積は3万9000立方フィート(およそ1100立方メートル)あり、一般的な貨物機では対応できない大型の貨物を輸送することが可能です。貨物室の扉は機首部分が兼ねていて、機首全体を左に最大110度開いて貨物の積み下ろしを行います。

【▲ スーパーグッピーの貨物室から降ろされる試験用のオリオン・ステージ・アダプター(OSA)。2022年8月10日撮影(Credit: NASA/Charles Beason)】

スーパーグッピーはアポロ計画の頃から活躍しており、サターンV型ロケットの一部や帰還後のアポロ司令船、国際宇宙ステーション(ISS)の構成要素などを運搬してきました。現在NASAが保有しているのは1980年代から運用されている機体で、元の所有者であるエアバス社から1997年10月にNASAへ移っています。なお、かつてスーパーグッピーを運用していたエアバスも、同様のコンセプトを持つ輸送機「ベルーガ」「ベルーガXL」を製造・運用しています。

今回スーパーグッピーが運んだのは「オリオン・ステージ・アダプター(OSA)」と呼ばれる部品です。OSAは有人宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」をSLSの上段(第2段)「ICPS」に搭載するためのリング状の部品で、高さ1.5メートル・直径5.4メートルのサイズがあります。OSAの内側には最大17機の超小型衛星(6Uまたは12UサイズのCubeSat)を搭載することが可能です。

【▲ スーパーグッピー到着時の様子を伝えるショート動画】
(Credit: NASA)

NASAによると、今回輸送されたOSAは実際の飛行で用いられるものと構造的に同一の試験用で、技術資源としてマーシャル宇宙飛行センターに保管されるとのことです。

なお、有人月面探査計画「アルテミス」初のミッションである「アルテミス1」で飛行するSLS初号機のOSAには、10機の超小型衛星が搭載されています。そのうちの2機「OMOTENASHI(おもてなし)」「EQUULEUS(エクレウス)」は、日本で開発された超小型衛星です。アルテミス1の打ち上げは、早ければ2022年8月29日に予定されています。

【▲ SLS初号機のオリオン・ステージ・アダプター(OSA)。2021年8月5日撮影(Credit: NASA/Cory Huston)】

関連:NASA新型宇宙船「オリオン」初飛行に向けてフェアリングの取り付けが始まる

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  • Image Credit: NASA/Charles Beason
  • NASA \- NASA’s Super Guppy Delivers Rocket Test Article to Marshall
  • NASA \- AOD Guppy

文/松村武宏

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