家族全員コロナ感染「どうすれば…」 トイレ別使用、入浴後は消毒も拡大防げず

長崎市内に設置されたドライブスルー方式の検査センターに多くの車が列を作る。感染者数は高止まりし、家庭内での広がりにも歯止めがかからない

 「いつかはこんな日が来ると思っていたが」-。長崎市の50代男性会社員は7月、同居する家族3人全員が新型コロナウイルスに感染した。「一緒に暮らしていたら感染してしまうと思う。どうやったら防げたのか…」。自問しても明確な答えは見つからない。
 感染力が強いオミクロン株への置き換わりで爆発的に感染者が増加した今年1月の流行第6波以降、学校や保育園、放課後学童クラブなどでクラスター(感染者集団)事案が頻発した。それに伴い、10代以下の子どもがいる家庭で感染が広がっていた。男性の妻は子どもと接する職業。「リスクは高いんだろうな」とは感じていた。
 7月上旬のある朝、妻が発熱と喉の痛みを訴えた。県内の感染者が急に増え、1月以来の最多を更新した時期だった。覚悟を決めて検査結果を待っていると夕方に陽性が判明。妻を自宅の1室に隔離し、男性と高校生の子どもも濃厚接触者として家にこもった。
 「もう感染しているかもしれない」「いや、まだ大丈夫」。思いが交錯する中、家庭内でもマスクを付け、手指消毒も日ごろより徹底した。二つあるトイレは一つを妻専用にして、入浴も妻を最後にして使用後の消毒も徹底してもらった。
 だが、妻の発症から4日目の朝、子どもが発熱。男性もその夜に熱が出た。翌日にかかりつけ医に診察してもらい、ドライブスルー方式のPCR検査の予約を取ってもらった。結果は2人とも陽性。男性は38度台後半の熱、子どもは39度台の熱に加えて激しい喉の痛みも訴えた。医療機関から薬を処方してもらわず、万が一に備えて多めに購入していた解熱鎮痛剤を服用。備蓄していたペットボトルのスポーツドリンクやお茶が役に立った。
 妻の感染で家族の食事の心配をしていたが、発症すると3人とも喉を通らなかった。「3日間、食欲はまったくなくて水分を取るのが精いっぱい。症状は軽いと聞いていたが、インフルエンザのときよりつらかった」。男性の体重は3日で4キロ減った。
 食欲が戻って数日は自宅にあった冷凍食品で済ませ、その後はネットスーパーを利用。市内に住む親戚に症状に合った薬を頼んで玄関前に置いてもらうこともあった。
 勤め先の上司は「いつも頑張っているんだから、こういうときくらいゆっくりしろ」と連絡をくれた。男性は管理職として部下に感染予防を指導する立場。リモートワークもできない職種で、もどかしさや申し訳なさを感じながら10日間を過ごした。
 職場復帰から約1カ月。せき込むことはあるが、ほかに後遺症はない。ただ「また感染するかもしれない」という不安は常に頭をよぎる。記者から「どうやったら家庭内の感染を防げたと思うか」との問いに、男性はしばらく考え込んだ。
 「完璧に防ごうと思うなら別居しかないが、ずっとは無理。食事を別々にして自宅でもずっとマスクを付けていれば、リスクは下がるかもしれない」と語ったものの、「でもそんなの家族と言えるんですかね」と問いかけるように話した。

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