大阪カジノの是非を問う住民投票「門前払い」…二の矢は公費投入差し止め訴訟

大阪府と大阪市が進めるIR(カジノを含む統合型リゾート)を巡り、誘致の是非を問う住民投票を求めた府民の直接請求は7月29日の臨時府議会で否決された。21万134筆(有効署名数19万2773筆)を集めたが、過半数を占める大阪維新の会、公明党が反対した。「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」は区域整備計画の審査を念頭に国への働きかけを強めていく。大阪市民5人が公費投入の差し止めを求める住民訴訟を起こした。(新聞うずみ火 栗原佳子)

カジノ誘致が進められている夢洲

もとめる会は7月21日、吉村洋文府知事に直接請求。知事は請求を受けてから20日以内に府議会を招集しなければならず、7月29日の臨時府議会が開かれた。知事は意見を付したうえで住民投票条例案を提出しなければならない。吉村知事は「府市はIR整備法に基づき必要な手続きを実施してきた。選挙で選ばれた議会で議決されている。改めて住民投票を実施することには意義がない」との意見を付した。

もとめる会の山川義康事務局長ら請求代表者6人が意見陳述。ギャンブル依存症の家族を抱えた苦しみや民意の重みを強調した。しかし6人で計30分。知事やIR推進局長への質問は5人以上の会派の維新、公明、自民に限られた。そして即日採決。門前払いさながらに条例案は退けられた。閉会後、もとめる会は「民意を問うことさえ否定し、固執する政策を押し通そうとする府知事と推進派議員の態度は、府政の重大な汚点として長く記憶される。民主主義を放棄する行為にほかならない」などと抗議声明を発表した。

活動は今後も続け、国が区域整備計画を認可しないよう求める意見書採択の取り組みも府内で進めるほか、8月末にも国交省と審査委員会への要請・交渉に取り組む。各地のカジノ誘致反対運動とも連携した行動で世論を喚起、大阪IRに融資予定の三井住友、三菱UFJ銀行への抗議も強めるという。

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一方、大阪市民5人が公費投入の差し止めを求め、臨時議会と同じ7月29日に大阪地裁に提訴した。予定地の人工島・夢洲は土壌汚染や液状化の可能性があるとして市は約790億円の負担を決定。市民側は「過大な支出を制限する地方財政法などに違反する」と主張する。住民監査請求したが「合議不調」となった。

原告の一人、名古屋市立大学名誉教授(地方財政学)の山田明さんは「監査請求で大阪市は居直ったかのような姿勢だった。公共事業や地方行財政を研究してきた者として、底なしの財政負担をするリスクは看過できない」と話している。

第1回口頭弁論は10月26日午後3時から202大法廷で。

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