薬物依存対策、欧州で広がる「ハームリダクション」とは 横浜で講演

「ハームリダクション」について講演する国立精神・神経医療研究センター部長の松本俊彦さん=横浜市南区

 薬物依存症者との向き合い方を考えるフォーラムが28日、横浜市南区の南公会堂で開かれた。国立精神・神経医療研究センター部長の松本俊彦さん(精神科医)が欧州を中心に広がる「ハームリダクション(被害の低減)」の取り組みを紹介し、日本でも実現可能な方法を探った。

 松本さんは、薬物犯罪が詐欺や傷害などほかの犯罪と比べて再犯率が高いことに触れ「刑罰にはあまり効果がない」と指摘。薬物を断つことよりも当事者の健康被害を減らし、支援につながることを重視するハームリダクションの重要性を説いた。

 ハームリダクションは2010年以降、欧州を中心に広がっている。松本さんは「感染症予防や過剰摂取防止の効果がある。新しい治療法ではなく公衆衛生政策の要素が強い」と解説し、日本での導入は「社会のコンセンサスを得るのが難しいが、厳しい取り締まりや予防啓発のコンセプトを変えることは今すぐできるのではないか」と話した。

 フォーラムは、薬物依存症者を抱える家族を支援するNPO法人「横浜ひまわり家族会」などが主催。オンライン併用で行われ、計約300人が参加した。

 同会の岡田三男理事長は「新型コロナウイルス禍で当事者や家族の環境も変わっている。支援方法も、新たな仕組みを考えていきたい」と話した。

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