一本杖スキー技術伝える貴重なメモ 上越市立歴史博物館へ寄贈 レルヒ少佐 明治時代の教師を指導

 上越市立歴史博物館は8月31日、新潟市東区の山岸秀夫さん(88)から一本杖スキーに関する史料の寄贈を受けた。山岸さんの祖父で高田師範学校教員だった山岸豊次郎さん(明治4年~昭和3年)がレルヒ少佐から指導を受けた際のメモで、スキーが教育分野へ普及していったことを裏付け、当時のスキー技術を現在に伝える貴重な史料となる。

レルヒ少佐から指導を受けた山岸豊次郎さんの孫、秀夫さん(左)が歴史博物館の宮崎館長(右)にメモを手渡す

 「スキー使用法」と題されたメモは原稿用紙5枚から成り、明治44年2月15日から19日まで、県内の体育教師が高田に集められ、レルヒ少佐らの指導でスキー練習を行ったことが冒頭に書かれている。その後は用具の手入れや着脱の仕方、不動姿勢、行進法、傾斜地の滑走法など指導内容が丁寧に記されている。
 メモは今年4月、山岸さんが父の遺品を整理していた際に発見した。山岸さん自身は祖父が体育教師をしていたことは知っていたが、レルヒ少佐からスキー指導を受けていたことは聞いていなかった。冒頭の「レルヒ少佐」の文字を見て新聞社に調査を依頼。貴重な歴史資料だと判明した。
 軍事技術だったスキーは高田の地で一般にも普及が図られ、教員や医師らが指導を受けた。同博物館が調べたところ、高田師範学校(後の新潟大高田分校)同窓会の記念誌の寄稿に、明治45年の3学期に体育教師からスキー指導を受けたという記述があり、豊次郎さんから師範学校の学生たちへスキー技術が伝えられていったことが分かった。
 寄贈のセレモニーは歴史博物館の所管施設である日本スキー発祥記念館(同市大貫2)で行われ、山岸さんが宮崎俊英館長にメモを手渡した。山岸さんは「しかるべき施設に寄贈した方がいいのではないかと考えた。皆さま方の役に立てるようだったらうれしい」と語った。宮崎館長は「教育関係の指導者による具体的史料は初めて。スキーがここ(高田)で始まり、広がったことが見えてくる」と話した。
 歴史博物館(同市本城町、高田城址公園内)は17日から12月4日まで企画展「日本スキーの黎明」を開く。今回寄贈を受けたメモも企画展の中で展示される。

発見された山岸豊次郎さんのメモ。最初のページにはレルヒ少佐と専修将校の小暮少尉の指揮でスキー練習をしたことが書かれている

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