原発再稼働、安全性 県「三つの検証」 「避難方法検証」終結へ 検証委が報告書案まとめる

 県が東京電力福島第1原子力発電所事故の原因や柏崎刈羽原発の再稼働へ事故を想定した課題をまとめる「三つの検証」のうち、原子力災害時の避難方法に関する検証委員会(委員長・関谷直也東京大大学院准教授)は3日、新潟市中央区の朱鷺メッセで会議を開き、検証報告書をまとめた。報告書は今後、花角英世知事に提出される予定。

会議終了後、報道陣の質疑に応じる関谷委員長(新潟市中央区の朱鷺メッセ)

 同委員会は2017年8月に設置。原子力災害時の対応を情報伝達や屋内退避、UPZ(原発から30キロ圏内)・PAZ(同5キロ圏内)住民の避難などに関わる論点について、5年間で24回にわたり検証を行ってきた。
 報告書案では、県が政府に対しUPZ圏内への事前配布や一般医薬品としての位置付けを求めているヨウ素剤の配布を全面的に支持。避難退避時のスクリーニング検査については、全数(全員)調査を行うにしても基準やポイント開設、なぜスクリーニングが必要か住民に周知することが必要だとしている。
 上越市の一部が含まれるUPZ内の住民避難については、渋滞などの原因となり得る自動車での避難などを検討。「現実では、広域避難では自動車での避難を考えることを明確に位置付けることが必要」としている。
◇論点整理どまり 県に運用委ねる
 検証報告書は133ページに及ぶが、「論点・課題の整理にとどまったとも言える」(同委員)内容で、論点の解消や課題の解決、運用は県に委ねられる。大河陽子委員(弁護士)は「福島の悲劇を繰り返さないために、県や住民が避難計画を厳しくチェックしてほしい。柏崎刈羽原発の再稼働までにこの課題を乗り越えなければならない」と述べた。
 委員会終了後、関谷委員長は報道陣の取材に応じ「ようやく議論を経て報告書をまとめることができたが、これがスタートライン。これからの原子力防災に向け(県は)スタートを切ってほしい」と述べた。
 「三つの検証」は同委員会と「原発の安全管理に関する技術委員会」、「原発事故による健康と生活への影響に関する検証委員会」で構成。検証総括委員会が最終的に取りまとめる流れ。「健康と生活」のうち、生活分科会は昨年1月に検証を終えている。

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