すかんち「恋のウルトラ大作戦」ROLLYがすべての少年少女に贈るロック入門書!  9月6日は、すかんちのボーカル&ギター ROLLYの誕生日

ロックを知りたければ、すかんち「恋のウルトラ大作戦」を聴け!

もしあなたがロックビギナーの若い人に「ロックの入門書みたいなアルバムを1枚教えてください」と聞かれたら、何と答えるだろうか?

『聴くべきロックの名盤○○選』みたいなものは書籍でもネット記事でも数多く見られる。そこにはHR/HMからパンク、グラムロックからニューウェイブに至るまで数多くのアルバムが紹介されている。ロックは多様なジャンルに進化しており、その魅力は一つのアーティストだけでは語れないし、簡単に一枚のアルバムで知ることはできない。

しかしロックを一夜漬けで学ぶなら、それにふさわしいアルバムがある。それが今回紹介する、すかんちのメジャーデビューアルバム『恋のウルトラ大作戦』だ。

高い演奏力と溢れるロック愛。ただのイロモノだと思うなよ!

すかんちは、そのバンド名の由来だったり、Vo&GのROLLY(当時はローリー寺西)のキャラクター、バンドメンバーのルックスなどから色物的な目で見られがちだが、その演奏力は高く、またROLLYが書くある意味偏執的な “ロック愛” に溢れた楽曲は、まさにロックの美味しいところ取りをした曲ばかりだ。

この『恋のウルトラ大作戦』でも、ROLLYの “ロック愛” が炸裂している。クイーン、レッド・ツェッペリン、ザ・フー、Tレックス、エンジェル、モット・ザ・フープルなど、ギターリフ、コーラスワーク、曲構成などにROLLYが愛したアーティストたちの影響が色濃く出ている。それぞれのアーティストの様々な楽曲を聴かなくても、その魅力がギュッと詰まった濃いめの味付けで簡単に味わうことができる。

しかし、ROLLYのアーティストへの思いが強すぎるばかりに、あまりにも本家に似通ってしまっている曲も存在し、それが故に「パクリ」だと揶揄されてしまうこともある。だがその批判はナンセンスだ。

「パロディ」と「パクリ」、「オマージュ」の違いについて、ネットでよく言われているのは、「パロディ」とは風刺や茶化すことを目的に模倣することで、元ネタを知らないと楽しめない。「パクリ」は利益のために創作的な表現を盗用することで、即ち元ネタがバレると困るものである、一方「オマージュ」は元ネタに対して尊敬・賞賛の念が込められているもので、元ネタが分かるとさらに面白い… という解釈だ。

この分類で考えれば、すかんちの楽曲は完全に「オマージュ」だ。彼らの曲は元ネタへのリスペクトにあふれており、ルーツを知っていればさらに楽しめる。さらに「元ネタは何か?」をリスナーに考えさせるような、そんな一面も持っている。まさにロックの世界を知るための手がかりとなる入門書のようなアルバムなのだ。

歌詞だって大きな魅力! ROLLYが描く恋愛観

『恋のウルトラ大作戦』をロックビギナーの若者に勧める理由は、オマージュに満ちた音楽性だけではない。その歌詞にも魅力があふれている。

ROLLYは、幼少の頃肥満児でイジメられていたことや、自身の高校時代の失恋エピソードなどをよく話している。そんなスクールカースト下位の立場からの恋愛観が、すかんちの歌詞にはたくさん登場する。たとえば――

 図書館の帰りに出会った 素敵な女の娘 イェイ イェイ  イカれちまってドキドキ Let's Go!  こっそり後を付けて Baby  番犬に噛みつかれたって 声を出すまい  君のことをおもって イライラ ハラハラ ドキドキ なんだよ (「君は窓辺のパントマイム」)

誰しもが経験する一目惚れ。しかし今のご時世ならストーカーまがいな行動をしてしまうのがすかんち流。外飼いの番犬がいるのが昭和らしくていい。

 なりふりかまわず アタックなんだ  恋の変化球を投げ続けろ  朝から晩まで アタックなんだ  弱みにつけこみ笑わせろ (「恋のT.K.O.」)

イケメンじゃない者がアタックする常套手段として、相手の懐に入り込み面白い人として認知を上げるのはよく使う手だ。リアリティに溢れてる。

 もう誰も止められない ラヴコール!ラヴコール!  一億年の彼方から ラヴコール!ラヴコール!  受話器をもって ふるえてる 呼び出し音が鳴る前に  思わず切ってしまった そんな覚えがあるだろう  恋のセリフ 復唱して あの娘のダイヤル レッツゴー! (「恋のショック療法」)

ケータイ、スマホが当たり前の現代では忘れ去られてしまった、女の子の家への電話。あの緊張とワクワク感を見事に表している。

昭和のラブコメにして、骨太なロック、そして壮大なロックオペラ!

このように、このアルバム『恋のウルトラ大作戦』には甘酸っぱくも思わず笑ってしまうような、昭和のラブコメの世界が広がっている。これらの歌詞が、ある時は70年代の骨太なロックサウンドに乗せて、またある時は壮大なロックオペラ風に歌い上げられる。これがまさに “すかんちの世界” なのだ。

自分は高校2年生の時にこのアルバムと出会った。そしてそれをきっかけにザ・フー、Tレックスを好きになり、名前しか知らなかったクイーンやレッド・ツェッペリンを聴くようになり、音楽の幅を広げてくれることにつながった。だから自分と同じように、ロックにも恋にもまだまだビギナーの現代の中高生にも是非このアルバムを聴いてほしいと思う。

ちなみに『恋のウルトラ大作戦』には英題がついている。それは、

“Ultra Operation Of Love Affair For All The Young Boys And Girls”

―― そう『すべての少年少女に贈る、恋の大作戦』なのである。

カタリベ: タナカマサノリ

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