築180年の和室、趣ある画廊に 藤沢の住宅街にオープン

移築された上座敷を活用したギャラリー「obi gallery」=藤沢市内

 一戸建て住宅の中に広がる江戸後期の世界。山梨県北杜市から移築した築180年の和室を利用したギャラリー「obi gallery」が神奈川県藤沢市村岡東の住宅街にオープンした。キュレーターだったオーナーの小尾久美子さん(55)が現代と過去が同居する不思議な空間を演出している。

 和室は漆職人の夫・庸太郎さん(73)の実家の一部。名主で呉服商だった小尾家は1842年ごろ、木造かやぶき入り母屋造りの店舗兼住宅を建てた。上座敷は総ケヤキ造りで当時の代官も宿泊し、戦時中は海軍元帥・山本五十六の家族も疎開していたという。

 ただ、維持管理が難しくなったため1975年に解体し、上座敷と床の間の2部屋は小尾さん夫婦の自宅に移築。和室の外側に当時の一般的な一戸建て住宅を建て、庸太郎さんの母が住んでいたが、5年ほど前に亡くなってからは、空き家になっていた。

 「状態は良く、書院造りで品もある。作品を展示できるのでは」と思い至り、三角形の近代的な展示スペースも新築。ギャラリーとして5月にオープンした。

 今年は1年を通じてお披露目の展示を行い、9月19日までは鎌倉市在住の漆芸家・岩田俊彦さん(51)と陶芸家の木村勲さん(68)の2人展を開いている。

 小尾さんは「古い和室と新しい作品。独特の空気感を楽しんでほしい」と話している。

 入場無料。木曜休廊、金~月曜は開廊、火、水曜は予約制。問い合わせは同ギャラリー電話0466(25)7581。

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