【新型コロナ】第6波以降、軽症・中等症からの死亡例激増 全死亡例の90%近くに 

国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:死亡数の推移

 新型コロナウイルス感染症の第6、7波による死亡例について、これまでと異なり、軽症・中等症からの死亡が急激に増えていたことが分かった。臨床現場の専門医が今年に入ってから指摘していた事実だが、死亡例データの解析で裏付けられたかたちだ。

基礎疾患のある患者が、肺炎に至る前に悪化?

国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:中等症での死亡数比較

 解析結果を公表したのは国立国際医療研究センター 国際感染症センターの大曲貴夫氏らで、同センターと国立感染症研究所が収集している死亡例を解析したもの。いわゆる第5波以前と以後の6、7波を比較し、全死亡例に対する軽症・中等症者の割合が急激に増え、約90%弱にまで高まっていることを突き止めた。いずれの時期も基礎疾患があった患者がほぼ90%以上となっており、基礎疾患のある患者が、直近は早期より死亡リスクが高まることを示唆している。

主症状の変遷も明らかに

国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第5波以前と以降の症状、処置の比較(以前)
国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第5波以前と以降の症状、処置の比較(以後)

より詳しく見てみると、第5波以前と第6波以降では肺炎に至ることが少なくなっており、ステロイドを投与したり高流量鼻カニュラ酸素療法(高濃度の酸素を鼻から常時吸入させ、肺炎で肺の能力が落ちても酸素不足に陥らないようにすること)を施す機会が減っていることが分かった。しかし全体の死亡数は増えており、肺炎以外の要因で死亡していることを強く示唆している。

国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第6波と7波の症状、処置の比較(第6波)
国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第6波と7波の症状、処置の比較(第7波)
国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第6波と7波の症状、処置の比較(第6波)
国立国際医療研究センター 国際感染症センター長大曲貴夫氏の資料より:第6波と7波の症状、処置の比較(第7波)

解析では第6波と第7波の比較も行っており、第7波ではワクチンを3回接種している患者が増えていることから、さらに肺炎をきたしている患者が減っていることが窺える。また同じく第7波では以前よりも発熱と咳が増えており、一見軽症化が進んでいるようにみえるが、死亡数が激増していることから、死亡リスクまで減っているわけではないことがこちらでも示唆されている

 解析をまとめた大曲センター長は「中等症でも持病のある高齢者は亡くなる人が目立つ。『新型コロナは怖い病気ではなくなった』という意見もあるが、現場ではコロナにかからなければ亡くなることはなかったというケースばかり」と臨床に立つ医師としての危機感を表明。感染対策とワクチン接種の重要性を改めて訴えている。

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