お嫁さんにしたい女優ナンバーワン!竹下景子が演じたソープ嬢モモ子シリーズ  じつは時代の社会問題も織り込んだハートフルドラマだった!?

竹下景子が“お嫁さんにしたい女優No.1”といわれるそのワケは?

「お嫁さんにしたい女優」というフレーズをめっきり聞かなくなった。晩婚化・非婚化の世の中のせいか、“嫁” という言葉に時代錯誤感があるせいか。昔は、清楚なイメージの女優が出てくるたびに、“お嫁さんにしたい” という枕詞が付きまとっていた気がする。“妻” でなく “お嫁さん”。男性側からだけでなく、その父母(舅と姑)の視点も込みなのだろう。

「お嫁さんにしたい女優No.1」と聞くと、今も竹下景子を思い浮かべる中高年が多いのでは。清楚な美しさに加え、TBS『クイズダービー』で “三択の女王” と呼ばれた、その聡明さも「お嫁さんに~」と言われる所以だった。

1978年には、シングル曲「結婚してもいいですか」をリリース。この曲、セリフから始まるのとしっとりとした曲調のせいか、あべ静江の「みずいろの手紙」を彷彿させる。鎌倉を舞台に、妙齢の女性の心模様を歌いあげるのだが、要は、煮え切らない恋人にイラつき、「私、お見合いするよ。他の人と結婚するよ。それでもいいの? え?」という内容。

けっして上手ではないが、透明感のある声、けなげなセリフは、まさに竹下景子。才色兼備なうえに、歌まで上手かったら出来過ぎなので、“お嫁さん” としてはこのくらいが丁度よかったのではないか。

佐藤慶や柄本明を相手に泡まみれ。夜9時台のドラマで描かれたソープランド

さて、そんな “お嫁さんにしたい” 竹下景子がソープランド嬢を演じて、当時話題となったのが、TBS系ドラマ「モモ子シリーズ」だ。単発ドラマとして1982年11月に第1作が放送され、97年まで計8作を数える人気シリーズとなった。当初のシリーズ名は「トルコ嬢シリーズ」。シリーズ途中に、トルコ風呂がソープランドに改称となり、85年に放送された第3作の冒頭には、トルコ風呂の看板を付け替える場面が出てくる。

このシリーズ、あの竹下景子が…… というだけでなく、夜9時台のドラマにソープランドが出てくるのが衝撃だった。真っ赤な浴槽、妙に広い洗い場とマット、スケベ椅子…… そんなセットや小道具が艶めかしい。モモ子役の竹下は、全裸にこそならなかったものの、露出の多い “仕事着” 姿を披露したり、あの “本番男優” の佐藤慶や柄本明を相手に泡まみれになったりと、“お嫁さん” 女優を覆さんばかりの大胆演技を披露している。

時々の社会問題が盛り込まれたドラマ「モモ子シリーズ」

全8作の中で一番の名作は、第1作の「十二年間の嘘 乳と蜜の流れる地よ」だろう。マイホームを建てるための土地を失ったことを家族に言えないサラリーマン(佐藤慶)。その土地の持ち主がモモ子なのだが、ラスト近く、人の好いモモ子は破格の価格で佐藤に譲ることを決意する。だが時すでに遅し。佐藤が妻を手にかけた後だった…… というストーリーで、とても切なかった。

この話、実際のニュースをヒントにしたらしい。サラリーマンが郊外に一戸建てを持つことを目標としていた頃でもあり、身につまされた人も多かったのでは。2作目以降も、サラ金、校内暴力など、その時々の社会問題を盛り込んでいたが、モモ子のお人好しっぷりと作品ごとに深まるドラマ全体のハートフル感が、私にはピンとこなくなり、4~5作目からは見なくなってしまった。

モモ子もさすがに15年間ソープランド嬢というわけではなく、途中芸者やスナックママに転身するが、長続きはせず、商売替えで苦労したようだ。

数多の巨匠に愛され、売れっ子写真家と結婚。すべてを手に入れた大女優

竹下としては、モモ子という、これまでと趣を変えた役を演じることで、“お嫁さんにしたい” 呪縛から逃れたかったのか。それとも女優としての冒険心だったのか。

岡本喜八、山田洋次、倉本聰、市川森一など、数々の巨匠に愛され、大女優の座を手に入れた竹下景子。私生活では売れっ子写真家と結婚し、2人の息子を育てた。

俳優になった息子たちを甘やかしているとの噂もあるようだが、実際のところはどうか知らない。そりゃ良妻賢母の称号まで手に入れたら、世間にやっかまれるだろうなぁ…… とは思う。

※2020年6月11日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 平マリアンヌ

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