荻野目洋子「NON-STOPPER」ディスコビートとアイドル歌謡の圧倒的リアリティ  最新マスタリングで待望のリイシュー!

最新マスタリングでリイシューされる荻野目洋子「NON-STOPPER」

本日2022年9月28日、荻野目洋子6枚目のオリジナルアルバムであり、自身のアルバムとしては初のオリコン最高位1位を獲得した『NON-STOPPER』が7枚目のオリジナルアルバム『246コネクション』とともに最新マスタリング、世界初のSACDハイブリッド化を施しタワーレード限定でリイシューされた。

1986年12月16日にリリースされた荻野目洋子6枚目のオリジナルアルバム『NON-STOPPER』の累計売上は80万枚を記録している。ここには、同じく自身のシングルヒットとして荻野目のシンガーとしての方向性を大きく変え、選択肢の幅を広げた「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」が収録されていた。

邦楽シーンの流れを大きく変えた「ダンシング・ヒーロー」

1985年11月21日にリリースされたシングル「ダンシング・ヒーロー」はお茶の間と当時のストリートカルチャーであったディスコミュージックの距離をグッと縮めた。

元々イギリス、マンチェスター出身のシンガー、アンジー・ゴールドのオリジナルチューンであった「Eat You Up」は「素敵なハイエナジー・ボーイ」という邦題で荻野目のリリースと同年の1985年8月25日にアルファ・レコードよりリリースされている。もちろんこれに先駆け、イギリスのパッション・レコーズからリリースされていたオリジナル盤が新宿、渋谷のディスコでヘビーローテーションされ、当時フロアを占拠していた高校生たちを熱狂させていたわけだが、この熱狂をオリジナルの国内リリースからわずか3ヶ月という短い期間でお茶の間に持ち込んだ荻野目の功績は大きい。

さらにこの楽曲をセレクトした荻野目スタッフの先見の明は、ここから90年代初頭にかけての “ハイエナジー・ミーツ・アイドル歌謡” という大きなムーヴメントの起点となっている。

リリース当時17歳だった荻野目だからこそ、「ダンシング・ヒーロー」には圧倒的なリアリティがあった。背伸びした高校生がディスコで熱狂しているナンバーを同年代の荻野目が歌う。歌詞の中に出てくる「真夜中のメリーゴーランド」というのは、まさにそんなディスコの隠喩だったと思わずにいられない。そんな熱量を孕んでいた楽曲だからこそ、邦楽シーンの流れを大きく変えるビッグヒットにつながったのだろう。

最新マスタリングでのリイシューの意義とは

このビッグヒットから約1年という時を経てアルバム『NON-STOPPER』がリリースされた。まさに満を持して… といったところだろう。このアルバムリリースと同時期にチャートを賑わせていた長山洋子「ヴィーナス」、石井明美「CHA-CHACHA」いったディスコでお馴染みのダンスチューンのカバーナンバーを敢えて取り上げ、先駆者の力量で時代の熱量を煌びやかに放出していた。

今回のリイシューの意義は、当時の熱量がリアリティを持ってマキシマムに再現している部分に因るところが大きい。今回の最新マスタリング、SACD化に際しては、サウンドスーパーバイザーとして当時荻野目の代表作をミキシングしていたミキサーズラボの内沼映二氏に依頼。シンセサイザーを主体とするディスコサウンドの輪郭をクッキリと際立たせ、荻野目のティーンエイジ・ボイスでありながら抑揚のある表現力豊かな “シンガーとしての魅力” を最大限まで引き出している。つまり、より繊細な音作りでありながら絶妙のサウンドバランスで、ダンスミュージックの本懐であるダイナミズムを体現している。このような当時を再現しながらも、2022年という時代に即したサウンドが耳の肥えた音楽ファンに、どのように感じるのか興味は尽きない。

最後に、当時、メインストリームの音楽の頂点にいたNOBODYが手がけた「Dance Beatは夜明けまで」「フラミンゴ・in・パラダイス」や、この後90年代に向けて確固たる地位を築いてゆく小室哲哉の「NON STOP DANCER」で感じ取れるソングライター陣の際立った個性にも注目してもらいたい。際立つ個性がダンスミュージックというカテゴリーの中で統一感を持って1枚のコンセプトアルバムとして確立しているのも大きな魅力だ。

カタリベ: 本田隆

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