加速するバイオレンス!刑事ドラマは「大都会 PARTⅢ」と「西部警察」で様相が一変?  わかりやすい勧善懲悪に溜飲が下がる思いをした人、手を挙げなさい!

わかりやすい勧善懲悪!昭和の刑事ドラマは「大都会 PARTⅢ」から様相が一変

80年代に一世を風靡していたカルチャーのひとつとして、いわゆる “刑事ドラマ” があります。

60年代~70年代にかけては高度成長期の歪みによる青少年の非行や、貧困が原因による犯罪など、どちらかというと犯人の心情に寄り添うような描写が多かったこのジャンルですが、1978年に始まった『大都会 PARTⅢ』から様相が一変します。

激しいアクション、カーチェイス、爆発や、どこからどうみても全く同情の余地のない悪い犯人… などのわかりやすい勧善懲悪なストーリーに、当時の大人も子供も溜飲を下げたことでしょう。

都会における西部劇! コンクリート・ウエスタンを標榜した「西部警察」

ところが、好評を博していたはずの『大都会 PARTⅢ』は、いつのまにか(1979年10月期)からタイトルと放送局を変えてリニューアルをいたします。それが『西部警察』というわけです。高層ビルに囲まれた都会における西部劇、“コンクリート・ウエスタン” を標榜したこの番組は、そのバイオレンス度が一気に加速していきます。

ところでこの番組、音楽の面に目を移してみると実に不思議なコントラストがございます。今回はそこに着目し、独断と偏見によるお話にお付き合いいただければと思います。

オープニングテーマの演奏はホーネッツ、高橋達也と東京ユニオン

『西部警察 PART-Ⅰ』
■ 西部警察メインテーマ
■ 演奏:ホーネッツ
■ 作曲:宇都宮安重

勇壮なイントロから始まる躍動的なベースライン、ギターとブラスが絡み合うような進行が高揚感を演出しております。この曲がかかるオープニングの映像には道路を越えてジャンプする車両や装甲車、川を飛び越えるフェアレディZや激しい爆発シーンなど、これから始まるであろう男たちの闘いに否が応にも胸が高まっていってしまうのであります。

『西部警察 PART-Ⅱ / PART-Ⅲ』
■ ワンダフルガイズ
■ 演奏:高橋達也と東京ユニオン
■ 作曲:羽田健太郎

『西部警察』も好評を博し、PART-Ⅱへと駒を進めます。その際にリニューアルされたオープニングテーマが「ワンダフルガイズ」となります。

作曲・編曲は渡辺真知子さんの曲を手掛けるなど、歌謡曲周辺にもその名を轟かせる羽田健太郎。そして演奏では『大都会 PARTⅢ』のオープニングを手掛け、一作置いてカムバックをした高橋達也と東京ユニオンが手掛けております。

こちらは勇壮というよりは、軽快かつスピーディーなブラストラックとなっております。前作を上回る壮大さに、これまた胸躍る展開にワクワクしてしまいます。

石原裕次郎が歌ったエンディングテーマ

さて、激しい闘いを繰り広げた大門軍団ですが、エンディングになると “ムーディー” … それとも “男の色気” と申しましょうか、演歌調の曲で終わります。そう、大門団長に木暮課長がタバコに火をつけて肩をたたきながら――

以下すべて石原裕次郎歌唱。曲数の関係で列挙するに留めることをご容赦ください。

1:みんな誰かを愛してる
2:夜明けの街
3:時間(とき)よお前は…
4:勇者たち
5:思い出さがし
6:嘆きのメロディー

石原裕次郎の “大人” を感じるボーカルは、昼の闘いへのねぎらいと夜の街への誘いに満ち溢れております。

放送当時は、正直、野暮ったくてダサいしオッサン臭いなぁ(失礼!)などと思ったものです。しかし実はこれ、激しい闘いに備えてテンションを高め、すべてが解決したそのあとはリラックスしてブランデーでも傾けながら明日への幸せを祈ろうではないか… という演出ではなかろうかと考えられるようになったのです。これはきっと、私も歳をとったという証左なのであろうと思ってしまうのであります。

『西部警察』… それは街で闘う人々のための一服の清涼剤として存在しえたのでしょう。そしてやはり人生に止まり木は必要なのでしょう。

このように、かっこいい男の世界の一端を垣間見せてくれた木暮課長、そして大門団長に敬意を表さずにはいられません。

2020年9月20日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: KZM-X

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