江戸期の擬宝珠再現で表彰 小田原鋳物研究所の上島さん 鳥取城跡の橋復元に協力 伝統工法で色付け

上島さんが復元に携わった鳥取城擬宝珠橋(上島さん提供)

 「小田原鋳物研究所」(小田原市曽我原)の上島国澄さん(77)が擬宝珠(ぎぼし)の製作で協力した鳥取城跡擬宝珠橋復元工事が8月、日本建設業連合会による「日建連表彰」の土木賞特別賞に選ばれた。鋳物研究に携わり培った技術と知識を生かし、江戸時代の色付けを再現した上島さんは「昔ながらの工法で試行錯誤したものが評価されてうれしい」と喜ぶ。

 鳥取城跡の内堀に架かる擬宝珠橋は1621(元和7)年に造られ、数回架け替えられながら1897年まで存続した。鳥取市が明治時代の写真などを元に2016年から19年に史跡内の木造橋としては全国最長の37メートルを復元した。

 上島さんは施工主から依頼を受け、欄干の上に飾られる擬宝珠12個の製作に着手。現存する江戸期の擬宝珠を基にして3次元の図面を描き、そのデータを元に鋳型を作成した。

 鍛造した擬宝珠の色付けは塗料を直接吹き付けず、「煮黒目塗装」と呼ばれる伝統工法を採用。ドラム缶で煮黒目液を煮込み、金属の酸化反応によって着色するが、上島さんは「液の劣化やかき混ぜる速度で色むらができてしまう。素朴な黒色を出すのに何度も失敗した」と苦労を振り返った。日建連は「モノづくりの原点として技術伝承に貢献した」ことを表彰理由に挙げた。

© 株式会社神奈川新聞社