令和4年秋の有隣荘特別公開「マティス—光と色と」〜 3年振りに復活した恒例行事のテーマは「光と色」

観光地である倉敷美観地区は、新型コロナウイルス感染症の感染者数にここ数年振り回されてきました。

例年開催されていた行事も、形を変えたり、中止になったりするものが多かったのですが、2022年秋はついに「恒例行事」が帰ってきたのです。

有隣荘秋の特別公開

大原美術館の創設者 大原孫三郎の私邸「有隣荘」は、例年春と秋の年2回だけ一般公開される特別な空間です。

3年振りの特別公開のタイトルは「マティス ― 光と色と」。足を運んでみました。

有隣荘内は通常、撮影禁止です。今回は特別に撮影許可をいただいています。

「有隣荘」とは

有隣荘は、1928年(昭和3年)、大原美術館の創設者 大原孫三郎(まごさぶろう)が、病弱な妻のために建設しました。

建築設計は、大原美術館 本館や、元中国銀行倉敷本町出張所(新児島館(仮称))なども手がけた、建築薬師寺主計(やくしじ かずえ)によるもの

和洋折衷の建築となっており、素人目にみても随所にこだわりを感じる建築物です。

令和4年秋の有隣荘特別公開「マティス—光と色と」

建物だけでも見応えはあるのですが、有隣荘特別公開のときは毎回テーマが設定された特別展として、作品も展示されます。

令和4年秋は、「色彩の魔術師」と呼ばれたフランス人画家「アンリ・マティス(1869-1954)」の作品が、光と色をテーマに展示されています。

なぜ「光」なのかというと、有隣荘という「場所」が関係します。

では、有隣荘内での展示を見て行きましょう。

明るい光が降り注ぐ「洋間」

《マティス嬢の肖像》

高い天井にシャンデリアのある洋間は、窓から降り注ぐ明るい光が、床板の反射も含めて部屋の美しさを引き立てます

洋間(過去の取材時に撮影)

開放的で落ち着いた空間の「一階和室」

日本庭園が目の前に広がり開放的ですが、全体的に薄暗く洋間と比較して落ち着いた空間です。

明るい空間の「二階和室」

最後は2階です。階段の途中では緑色の瓦屋根を間近で見る事もできます。

有隣荘は「緑御殿」とも呼ばれている

二階和室は、倉敷川などが一望できる明るく開放的な空間です。

カラフルなマティスの挿絵本《『ジャズ』》が展示されていました。

通常、美術館内ではパーティションなどが設置され、一定以上作品に近づくことができません。

しかし、有隣荘はあくまでも「私邸」として建てられた建築物なので、そういうものはなく「家に飾られている絵画」という感じで鑑賞できます

おわりに

大原美術館 主任学芸員 孝岡睦子さん

大原美術館 主任学芸員の孝岡睦子(たかおか ちかこ)さんは、有隣荘の特別公開について以下のように語っていました。

孝岡さんの解説

美術館では通常、学芸員が専用のライトを使い、作品のよさを伝えられるようにしっかりと調整して展示をしています。

しかし、有隣荘ではそれができません。これは有隣荘のデメリットでもあり、メリットでもあると思っています。

秋の少しずつ太陽が低くなっている時季は、太陽の光が刻々と変わります。マティス自身は非常に「太陽の光」というものを自分の芸術で重視していました。

そんな季節に、光と色彩の画家の作品を味わっていただく絶好の機会ではないかと考え、この度の展示を作らせていただきました。

秋の有隣荘特別展示は「2022年10月7日(金)から10月23日(日)」まで開催されています。

足を運んだ際は「光と色」にも注目してみてください

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