スケバン刑事から一転!南野陽子が切々と歌う ♪好きよ あなた♪好きよ あなた  たとえ1位でなくても忘れらないナンノの名曲「接近(アプローチ)」

ミスマガジン出身の南野陽子と斉藤由貴

秋の気配と共に毎年口ずさみたくなる歌があります。それが、南野陽子の5枚目のシングル「接近(アプローチ)」です。

当時十代の男子の注目度が抜群だったグラビアコンテスト「ミスマガジン」出身のアイドルの中で僕はダントツに斉藤由貴のファンだったのですが(思春期の男子心理によくある「お前があのコなら俺はこのコ」の理論で)親友のKくんは南野陽子に惚れ込んでいました。

そんなよくわからない思春期男子の意地の張り合いで、僕が斉藤由貴のレコードを買えば、彼は南野陽子のレコードを買う。斉藤由貴の映画に一緒に行けば、南野陽子の映画にも一緒に行く―― 何かよくわからないけれど「俺の女を見る眼は確かだぜ」的な、くだらない戦いがあったように思う。

そんな僕なので、南野陽子のリリースする楽曲、ベストテン番組での姿は知ってはいるけれど「ふーん」と気に留めなかった。ただし、彼女が主演する『スケバン刑事Ⅱ少女鉄仮面伝説』。これは欠かさず観ていたけれど。

南野陽子の人気を確実にした『スケバン刑事Ⅱ少女鉄仮面伝説』の放送終了のタイミングでリリースされた「接近(アプローチ)」。作曲は「土曜日のタマネギ」「青空のかけら」など斉藤由貴作品の名曲を手がけた亀井登志夫、作詞は森田記(康珍化のペンネーム)。

スケバン刑事のイメージを一転させた南野陽子

スケバン刑事でのイメージから一転、片思いの女心を切々と歌い上げるこの歌は思春期の僕の心をギュっと掴んでしまいました。僕は親友のKくんには「ナンノには興味無いよ」という顔をしながら、少しづつ恋のようなものに落ちたのです。

そんなちょっとした罪悪感も相まって、この歌がどんどん好きになり、京都は河原町にあるレコード店「十字屋」に足を運んで、シングル盤を購入してしまったのです。斉藤由貴という本命が居ながら……。

 友達の恋相談したいのって言ったけれど
 ホントはあなたに会いたかったの

… と、グイグイ迫ってくるナンノの健気な潤んだ瞳に僕の心はざわつくのでした。

 好きよあなた
 好きよあなた
 胸が痛くなる

くーっ! Kくんへの変な罪悪感に重ねてナンノにも何か「すまない…!」という気持ちになる。康珍化先生、流石です! こんな京都のボンクラ少年にこんな妄想までさせてしまうのだから。

こんなに切なげなメロディと歌詞なのだが、後半で、

 あの子が怒っても あきらめないわ
 気がついてね 振り向いてね

… と、女の情念を感じさせ、女の怖さを少し匂わせる所も良い。

最高6位だけど、忘れられないナンノの名曲

アレンジを含めた全体のイメージが、リリース日の近かった小泉今日子の「木枯らしに抱かれて」にどことなく似ていると当時から感じていたのだけれど、これは偶然なのでしょうか。

僕の見解は、どちらも1985年にデビューし同年大ヒットを放った、フォーク、ケイジャン、ザディコ、レゲエ、スカなど北中米の民俗音楽を大胆に採り入れたサウンドで一世を風靡した “ザ・フーターズ” の影響もあるのではないかな? と睨んでいます。考えすぎかな(笑)。

この北中米の民族音楽を感じるフレーズが日本の秋、枯葉の舞う街並み、そして古ぼけたカフェテラスで、そっと恋人がいる片思いの男を待つ南野陽子の心情―― と相まってこの曲を引き立てるのだと思います。

残念ながらこの曲の最高位は6位。次のシングル「楽園のDoor」で初の1位を取ることとなる。ブレイク寸前、普通の女の子の片思いの心情を切々と歌う南野陽子がまるで歌の主人公のようで、忘れられない名曲だと思います。

少し涼しくなり、秋の気配を感じる季節―― また僕の心は南野陽子の接近(アプローチ)によってざわつくのです。

カタリベ: タカダスマイル

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