日中国交50年 台湾とは断交、国籍巡り分かれる立場 華僑の選択は?横浜でシンポ

50年前のそれぞれの選択を語るシンポの参加者=横浜市西区

 日中国交正常化50周年を契機に、華僑たちが国籍などでさまざまな選択を迫られた当時の状況を振り返るシンポジウムが23日、横浜市西区の神奈川大で開かれた。日本華僑華人学会年度研究大会の一環で、横浜中華街の華僑4人が当時を語った。

 1972年の日中国交正常化では華僑社会が揺れ、中国籍を取得する人や、日本国籍、無国籍を選ぶ人など、立場が分かれた。シンポは、国交正常化が華僑社会に与えた影響を振り返るとともに、「当時の体験者の生の声を記憶にとどめる」(伊藤泉美横浜ユーラシア文化館副館長)ために企画された。

 華僑の重鎮である曽徳深さん(82)は、国交正常化を受け、中国籍を取得したとしながらも「華僑は日本国籍となった人でも、文化的アイデンティティーは中国であるという側面が強い」と強調。現在、中国と台湾の緊張が高まるが「変な政治の影響を受けず、これからどう生き延びていくかが課題だ」と語った。

 日本が中国と国交を結んだ一方で中華民国と断交した影響で、早稲田大教授の陳天璽(てんじ)さん(51)一家は無国籍を選んだ。台湾で知り合った両親は大陸出身だったが、親族に国民党将軍がいたため中国籍を選ぶ余地はなく、日中戦争の記憶から日本国籍も選ばなかったという。

 陳さんは「無国籍の選択で地球市民の意識を持つ。平和的な国際関係、中国の和平統一を願う」との父親の言葉を紹介し、「自分というアイデンティティーと法的証明書はイコールではない」と訴えた。

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