リンガーハット60年

 シャキシャキの野菜とツルツルのめん、濃厚なスープ…。パリッと香ばしいギョーザとの相性は抜群で、子どもの頃から何度食べても飽きない味だ。長崎ちゃんぽんチェーンのリンガーハットが今年、創業60年を迎えた▲長崎市鍛冶屋町でとんかつ店として誕生。その12年後、ちゃんぽん店開業を皮切りに全国に進出し、今では国内外に600店超を構える一大チェーンに成長した。県民自慢の「長崎ちゃんぽん」を全国区にした立役者でもある▲節目の記念誌に目を通すと、踏ん張り所の逆境時にこそ、飛躍の種が蒔(ま)かれていることに気付く▲バブル崩壊による経営危機では、トヨタの生産方式を手本に現場の無駄を隅々まで見直し、調理機械まで自前で作り上げる徹底ぶりだった▲リーマンショックの不況は、中国製冷凍ギョーザ事件で食の安心・安全が揺らいだ時期とも重なる。ここでは割高と分かっていて野菜・小麦粉を国産化し、消費者の信頼をつかんだ▲「損得より善悪」「商売は儲(もう)け以前に正しくなければならない」。記念誌には創業メンバーでもある米濵和英名誉会長らの経営哲学もつづられている。コロナ禍、原材料費の高騰-、多くの企業、業界にとって今はかつてない逆境の時代。ピンチを飛躍に変える足掛かりを何としても見つけ出したい。(真)


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