長崎大生が民放連賞で優秀賞 エフエム長崎「砂漠を泳ぐ野良猫」 若者とカルチャーつなぐ

自分たちの感性でラジオ番組を作り受賞した春田さん(左)と衣川さん=長崎市栄町、エフエム長崎

 今年の日本民間放送連盟賞(民放連賞)ラジオエンターテインメント部門で、空間作りユニット「Pionier(ピオニール)」として活動する長崎大経済学部3年の春田晃志さん(20)と衣川日菜実さん(21)が出演するエフエム長崎の番組「砂漠を泳ぐ野良猫」が優秀賞に選ばれた。若者とカルチャーを電波でつなぐことがテーマの番組で「新しい感性による可能性を強く感じさせる」「今後に最も期待したい番組」などと評された。
 民放連賞は質の高い番組制作の促進などを目的に1953年に創設。「砂漠―」は今年4月から毎週日曜深夜0時から1時間放送。農業や伝統工芸などに携わる県内外さまざまな人と対談したり、日常で感じた同世代と共有したい話題を議論したり、2人の目線で見つけたテーマを深掘りしている。
 受賞したのは、長崎市琴海地区にあるテントサウナを体験し、魅力を伝えた4月10日放送分で、番組開始から2回目の回が受賞する快挙となった。番組ディレクターを務めるエフエム長崎の浦田壮一郎さん(31)は「賞のために作り込まれた特番などもある中、彼らの感性で『いい』と思ったことをやっていることが評価され、すごい」と喜んでいる。
 春田さんと衣川さんは、「楽しいことが何もない」とやゆする声もある長崎のまちを「どれだけ“面白く”できるか」をテーマにユニットを昨年結成。空間演出に工夫を凝らした交流イベントなどを開催してきた。
 ラジオ番組は、エフエム長崎の職員が「ラジオでの空間作りに興味はないか」と声をかけたことがきっかけ。ただ、2人ともラジオになじみがなく、「基本的な情報収集」からスタートしたという。若者に面白いと思ってもらえるよう、ラジオの収録とインスタグラムの生配信を掛け合わせて音と映像で音楽を表現したり、公園で収録したりするなど型破りで新しい方法を実践。中でも選曲には毎回最も時間をかけ、その日のテーマをイメージした5曲ほどを選ぶなど、2人のこだわりが随所に生かされている。
 番組名の「砂漠」は情報であふれ返る現代社会を表し、「野良猫」は「何も考えていないようで実は賢い猫の特徴」(春田さん)を若者と重ね合わせた。「カルチャーに触れた若者が深いところに賢さを蓄え、情報砂漠の中を泳いでいけるように」との思いを込めている。
 春田さんは「(番組は)10人に1人ぐらいに深く刺さればと思っているので、賞に選ばれて驚いた」。衣川さんは「番組でいろんな人を取材をする中で、時代が変わっても変わらず残り続けるカルチャーの『本質』というものに気付き感動した。カルチャーから想像力を働かせ、若者には自分なりの選択肢を持ってほしい」と話した。
 今後はピオニールとして空きビルを活用したイベントの計画をしており、若者を巻き込んだ公開収録などアイデアを膨らませている。

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