【特別ライブレポート】30周年を迎えた古内東子の東京公演を愛情たっぷりにお届け!  東京国際フォーラムで開催「TOKO FURUUCHI 30th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE」

古内東子デビュー30周年

古内東子は1993年2月21日にシングル「はやくいそいで」でデビューしたシンガーソングライター。2022年、デビュー30周年イヤーに突入し、2月にはピアノトリオで制作したオリジナルアルバム『体温、鼓動』がリリースされている。

そんな30周年イヤーを迎えた古内東子さんの東京公演を堪能して参りましたのでレポートしたいと思います。いわゆる通常のライブレポートは他の音楽サイトに掲載されていると思うので、長年のファン目線で、この30年の想い出と共に綴っていきたいと思います。是非、最後までお付き合い下さい。

僕が古内東子さんのファンになったのは1994年。デビュー翌年に発売された3枚目のアルバム『Hug』からなのですが、当時働いていたCDショップのスタッフの女性がこのアルバムを聴いて号泣していたので、自分も聴いてみたのがきっかけです。古内さんの詞の世界も気に入りましたが、グルービーなサウンドにも痺れました。何といっても古内さんの声はそれまでに聴いたことのないクセになる声でした。

僕が最初に観たコンサートは原宿クエストホールで行われたファーストコンサート。

「私が人を好きになったのは小学校5年生の時、その時も今も人を好きになる気持ちは何ら変わりありません」

―― という古内さんの痺れるトークを聞いた時から、自分にとって “恋愛の神様” になったのは言うまでもありません(笑)。それからすべてのアルバムをリアルタイムで聴き、コンサートには何回足を運んだか記憶にないほどです。

Blu-ray化されたライブ映像

先日(2022年9月21日)『魔法の手(Deluxe Edition)』が発売されましたが、『toko furuuchi コンサート98「魔法の手」』がBlu-ray化されました。

もちろんこのコンサートも当時見ていますし、今年は『体温、鼓動』の発売後にブルーノート東京で行われたコンサートも拝見しました。とはいえフルバンドのコンサートは久しぶりで、東京国際フォーラムCで古内さんのコンサートを観るのは2016年以来だと思います。

東京国際フォーラムで開催されたフルバンドのコンサート

30周年の記念すべきフルバンドのコンサート『TOKO FURUUCHI 30th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE』は、10月6日の大阪公演に続き、10月11日に東京国際フォーラムCで行われました。1曲目はスクリーンにシルエットだけ映し出された古内さんが歌い始めます。ファーストアルバム『SLOW DOWN』のタイトルナンバー「SLOW DOWN」。この曲から始まるだけで、その後のセットリストにも期待が高まります。

そして幕があがり、黒いロングドレスで華やかに現れた古内さん。次の曲はセカンドアルバム『Distance』のタイトルナンバー「Distance」。もうこの2曲を聴いただけで、古内さんの30年の集大成的な選曲になることを確信しました(笑)。7人の凄腕のミュージシャンたちが、古内サウンドをがっちりと固め3曲目はいきなりヒットナンバー「大丈夫」。「え! 最初からこんなに飛ばしていいの!?」とかなり興奮してしまいました。

新作「体温、鼓動」からも歌声を披露

そして、リラックスムードの古内さんから簡単な挨拶があり、また曲に突入したのですが、「え?これって自分のために選曲してくれてる?」と図々しい勘違いをしたほどです。

何故なら次の曲は2018年に発売されたアルバム『After The Rain』から「Enough is Enough」。クニモンド瀧口さんがアレンジを手がけた、個人的にお気に入りのナンバーなのですが、結婚して母になり、新たに愛を歌い始めた古内さんの新境地を開拓したとも呼べる名曲なのです。

そして最新アルバム『体温、鼓動』から「動く歩道」。アルバムの中で一番好きな曲だったので、もうその後は古内さんの世界にどっぷりと入り込んでゆきました。

そして「うそつき」のイントロが流れた途端、古内さんのファンになった1994年頃の空気感が自分を支配し始めました。音楽というのは過去へタイムスリップさせる作用があると思うのですが、オリジナルアレンジを変えずに演奏してくれると、なおリアルにタイムスリップすることができるのです(ちなみに「うそつき」はイントロだけで泣けてきます)。

重箱の隅を突っつく選曲に感激

今回は90年代の古内さんの代表曲を中心に選曲されていたのですが、普段滅多に聴くことのできない「Jeans」「シャワールーム」「キッスの手前」「シャツのボタン」という重箱の隅を突っつく選曲をして下さる部分にファンサービスを感じました。

今回の選曲はギターの石成正人さんと古内さんで決めていったそうですが、石成さんはアマチュア時代から古内さんのファンだったそうなので、ファン心理をよくわかっていらっしゃいますね。石成さんと言えば、前日にJUJUさんのツアーファイナルにも参加していたはずなので、よく2日連続であんなに濃い演奏ができるもんだと感心してしまいました。プロってすごいですね。

他にも「銀座」「逢いたいから」「悲しいうわさ」といった代表曲を取り上げた他、アルバム『Hug』に収録の「Lighter」まで歌ってくれて大満足。そのあとは「誰より好きなのに」をしみじみと。この曲は何回聴いても決して色褪せることはありません。

これまでにない充実の選曲に、ここで終演を迎えると思いきや、古内さんが「バラードはここまで!」と軽やかに宣言し、会場のテンションはマックスに!「魔法の手」、デビュー曲「はやくいそいで」そして、ポニーキャニオン時代の「スーパーマン」「コートを買って」というナンバーまで。フルバンドならではの選曲です。

そして本編の最後は「Strength」。もちろん「宝物」や「Peach Melba」も聴きたかったんですけど、ここまで歌ってくれて文句を言ったらバチが当たりますよね(笑)。

アンコールは定番ナンバー「歩幅」から!

そしてアンコールは真っ赤なドレスに身を包んだ古内さんが登場(ライトのせいか朱色に近い赤に見えました)。黒のドレスも素敵ですが、こういう華やかな色も似合ってしまうのが古内さん。

アンコール1曲目はファンの間ではもはや定番曲でもある「歩幅」。どの時代の作品にも人気曲があるというのは、古内さんが一定以上のクオリティで作品を作り続けてきた証しです。

そして最後の2曲は、古内さんが初のTOP10入りを果たしたアルバム『Hourglass』から「あの日のふたり」、定番中の定番曲「いつかきっと」。この曲で幕を閉じました。もちろんセットリストなど知らずに集中して最後まで堪能させていただいたのですが、何とノンストップで約2時間半。アンコールを含めると25曲というコンサートは古内さん史上初だったのではないでしょうか。まったく飽きることなく最後まで楽しませていただきました。

これからもラブソングを

今年は日本に女性シンガーソングライターが出現して50年という記念すべき年です。その歴史の中には古内東子というアーティストも含まれるわけですが、30年のキャリアで大きなコンサートを開催できるアーティストはほんの一握りです。

東京公演は3階席までお客さんがびっしり埋まっていました。自分は女性シンガーソングライターを長きに渡り追いかけてきましたが、古内さんのような存在のアーティストを他に知りません。

齢を重ねてますます魅力的になる古内さんですが、10年後にも20年後にもラブソングを僕らに届けてくれることを願ってやみません。改めて古内東子さん、デビュー30周年おめでとうございます。

カタリベ: 長井英治

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