相模原・藤野地区の築150年の古民家継承へ 世代超え地域活動の拠点に クラファンで資金集め

里山に建つ築150年の古民家「なじくぼ」=相模原市緑区(NPO法人自然体験学校みどり校提供)

 自然と人々が共存する相模原市緑区の藤野地区で、古民家を継承するためのクラウドファンディング(CF)が行われている。築150年の古民家は地元にある温泉旅館「陣渓園」の代表・大木康敏さん(71)の生家で、近年は自然体験活動の拠点として使われている。家族の家から、地域の家へ─。世代を超え、誰もが立ち寄れる場所をつくりたいと思いを込める。

 11月初旬。夕日が沈み、辺りが暗くなり始めたころ、古民家「なじくぼ」に明かりがともった。台所の隣の居間では地元の住民たちがいろりを囲み、できたばかりの団子汁をすすっている。

 「子どものころは家族4世代が暮らしていた。こんなふうに毎晩、いろりの周りに集まったよ」

 輪の中心で大木さんがほほ笑んだ。

 里山に立つこの家で生まれ育った。幼少期は養蚕と林業を営む祖父母らと共に家で蚕の繭を育て、裏山を駆け回ったという。

 祖父母や両親が亡くなった後も維持管理に努め、明治時代初期に建てられた木造の家には大黒柱や梁(はり)、縁側などが当時の美しい姿のまま残っている。映画やドラマのロケにも使われ、屋号の「なじくぼ」は愛称として親しまれている。

 一方、大木さん自身が古希を迎え、近年は一人で管理していくことに不安を覚えるようになったという。CFは、藤野で一緒に活動するNPO法人「自然体験学校みどり校」代表理事の土屋拓人さん(46)に相談する中で持ち上がった。

 みどり校は山菜や茶摘み、ユズ収穫など自然と地域資源を生かした体験ツアーを季節ごとに開催している。ツアーには都心や県外からの参加者が多く、リピーターからは「田舎のおじいちゃんの家に帰ってきた」という声も上がる。

 「なじくぼはいろいろな人が集う自宅のリビングのような場所。僕らにとっても大切な家でこれからも守っていきたい」と土屋さん。現在はみどり校の活動拠点だが、今後は地域の交流拠点として開放し、さまざまな団体がイベントや研修などで活用できるよう間口を広げていくという。

 CFは中長期で行う予定で、第1弾は古民家の裏山に広がるユズ畑に農業用モノレールを設置するための寄付を呼びかけている。

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