ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した南天の渦巻銀河NGC 7038

【▲ 渦巻銀河「NGC 7038」(Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Jones; Acknowledgement: G. Anand, L. Shatz)】

こちらは南天の「インディアン座」の方向約2億2000万光年先にある渦巻銀河「NGC 7038」です。明るく輝く中心部分の銀河バルジや、その周りを優雅に取り囲む渦巻腕(渦状腕)といった渦巻銀河の構造が詳細に捉えられています。古い星が多い中心部分と、新しい星が多く青色がかった渦巻腕のコントラストに美しさを感じます。また、背景には宇宙の広大さを物語る無数の銀河も写り込んでいます。

この画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡「広視野カメラ3(WFC3)」を使った15時間に渡る観測によって得られた画像をもとに作成されています。観測の目的は、遠くの宇宙までの距離を測る「宇宙の距離はしご」の精度を高めることでした。

画像を公開した欧州宇宙機関(ESA)によると、天体までの距離を直接測定できるのはおおむね地球から3000光年以内で、それよりも遠い天体までの距離は「ものさし」となる手法をいくつかつなぎ合わせることで求められています。宇宙の距離はしごとは、いろいろな「ものさし」をつないで遠方宇宙までの距離を測定する様子を、梯子(はしご)をつないで高みを目指そうとする様子にたとえた呼び名です。

天体の明るさは距離の2乗に反比例します。宇宙の距離梯子を構成する「ものさし」のなかには、変光周期が長いものほど本来の明るさが明るい「セファイド(ケフェイド)変光星」や、本来の明るさがほぼ一定であることが知られている「Ia型超新星」(白色矮星と恒星の連星系におけるガスの移動、あるいは白色矮星どうしの合体などで起こるとされる超新星)を利用して、観測された見かけの明るさをもとに地球からの距離を求めるものがあります。両者を比較すると、Ia型超新星はセファイド変光星よりも遠くまでの距離を測定するのに用いられる「ものさし」と言えます。

NGC 7038では、2018年11月に「ものさし」の1つであるIa型超新星「SN 2018hsa」が検出されました。セファイド変光星とあわせて、2種類の「ものさし」で1つの銀河までの距離を測定できる機会が巡ってきたのです。ハッブル宇宙望遠鏡によるNGC 7038の観測は、「ものさし」としてのIa型超新星を較正し、地球からの距離をより正確に算出する上で役立てられます。

冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡の今週の一枚として、ESAから2022年11月7日付で公開されています。

Source

  • Image Credit: ESA/Hubble & NASA, D. Jones; Acknowledgement: G. Anand, L. Shatz
  • ESA/Hubble \- Investigating A Made-to-Measure Galaxy

文/松村武宏

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