「ワクチン打つと…」こんなデマにご注意 新型コロナ

 

「ワクチンを打つと遺伝子が組み換えられる」「妊娠できなくなる」―。新型コロナウイルスワクチンの接種を巡り、会員制交流サイト(SNS)上には、科学的根拠がない情報も飛び交う。専門家は「発信源を確かめる必要がある。正しい理解に基づき、打つかどうかを判断してほしい」と呼び掛ける。

 厚生労働省ホームページには、こんな記述がある。「接種が原因で、何らかの病気による死亡者が増えるとの知見は得られていません」「ワクチンの毒性で、実験動物が異常な死を遂げたとの事実は確認されていません」…。誤った情報への注意を促す。

 ▽「不妊になる」とうわさも否定

 広島大大学院の坂口剛正教授(ウイルス学)は「ネット上のデマは科学的に誤りを証明できる」と話す。

 例えば、ワクチンに含まれるメッセンジャーRNA(mRNA)がDNAに組み込まれ、遺伝情報が書き換わるとの内容。「mRNAはウイルスの免疫をつくる働きを終えると、短時間で壊れる。それにDNAがある細胞の核にはメカニズム上、入れません」。「不妊になる」とのうわさも否定する。このデマは「胎盤形成に必要なタンパク質とコロナのタンパク質が似ている」との誤情報に基づくとみられる。

 「心配は分かるが、厚労省など公的機関が出す情報を参考に判断してほしい」と坂口教授。不安がる人が多い接種後の発熱や痛みについては「免疫をつくるのに伴う正常な反応。それだけワクチンの効力が高いと思ってほしい」と説く。

 また、アレルギー体質を理由に接種できないと思い込んでいる人がいると指摘。「厚労省が注意を促しているのは、過去にアナフィラキシーなどの重いアレルギー反応を起こした人だけだ」とし、食物や花粉アレルギーがあっても接種できないわけではないとする。「感染すれば、後遺症が残ったり大事な人にうつしたりするリスクが高まることも忘れないでほしい」

 医療現場には「ワクチンの効果が上がっていることも知って」と接種を促す声もある。東京都のデータでは、新規感染者や入院患者に占める高齢者の割合が目立って減ってきた。病院でのクラスター(感染者集団)発生も減っている。県立広島病院(広島市南区)呼吸器センター長の石川暢久医師は「高齢者や医療者に接種が浸透したため」とみる。

 石川医師は、感染者を診てきた立場から「若ければ重症化しないとは思わない方がいい」と注意を促す。5月の「第4波」では20~30代の中等症の入院患者が増え、40代の重症者にも対応した。「接種率が低いと感染拡大が抑えられない。ワクチンはリスクより恩恵の方がはるかに多いと知ってほしい」と話す。 

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