中川幹太上越市長 就任1年 公約、政策の具現化は 九つの政策プロジェクト 真価問われる2年目

 上越市の中川幹太市長(47)は9日で就任から丸1年を迎える。公約推進の準備期間と位置付けた1年目が終わり、「熟度はさまざま」(中川市長)という九つの政策プロジェクトを今後どのように具現化していくのか。真価が問われる2年目が始まる。

定例記者会見で、市長就任1年を振り返る中川市長(10月、市役所)

 中川市長は就任早々、政策テーマの推進に向け、副市長を現行の2人から4人に増やす体制、外部の有識者を登用する政策アドバイザー(政策諮問委員)の制度を打ち出した。昨年の市議会12月定例会で提案したが、議員からは「組織改革の全体像がはっきりしない」「性急な提案」などと厳しい指摘が相次ぎ、いずれも否決された。
 「ご指摘を真摯(しんし)に受け止める」と語った中川市長は今年3月、2022(令和4)年度当初予算案と共に、九つの政策プロジェクトを発表。「地域自治推進」「地域交通」「子育て」「健康」「防災」「農林水産」「脱炭素社会」「通年観光」「人事改革」の各分野で進めるとした。
 人事改革については、4月に庁内でプロジェクトチームを立ち上げて検討を開始。8月には、副市長4人制を見据えた分野別4セクションでの部局編成とともに、政策アドバイザーが各セクションからの相談・提案に対し助言・提案する体制案を示した。
 副市長4人制を12月議会、政策アドバイザー配置を来年の3月議会に提案する考えを示しており、再度、市議会の反応が注目される。

就任早々に打ち出し、市議会に提案した副市長4人体制は賛成1人のみで否決された(昨年12月)

◇地域自治の行方
 政策プロジェクトの中でも、地域自治は中川市長が選挙時から改革を強く訴えてきたテーマ。来年度からの導入を見込む「(仮称)地域独自の予算」が議論を呼んでいる。
 本年度いっぱいで終了する方針の地域活動支援事業との大きな違いは、「市が(提案された取り組みを)審査し、予算案として議会の議決を頂くこと」(野上伊織自治・市民環境部長)。取り組みは来年3月議会で審議され、予算成立したものを新年度から実施する流れとなっている。
 期待する声が上がっている一方で、疑問や不安も聞かれ、8月の地域協議会会長会議では「日程的に難しい」「基本的にハードルが高いと感じる」「各区のバランスは取れるのか」といった指摘も相次いだ。
 9月議会の一般質問でも話題に上がり、中川市長は答弁で「支援を受けたいと考える団体が日程的な理由で提案できなかったという状況にならないよう配慮する」「地域ごとに人口や地勢、資源や課題が異なる中、地域の提案件数や予算規模、内容は異なってくる」などと説明し、理解を求めた。

◇波紋広がる発言
 中川市長はこの1年、自身の公の場での発言について後日陳謝することが複数回あった。
 4月には高田本町商店街での意見交換会で「直江津には商店街が(もう)ない」などと発言。上越商工会議所と市内民間企業で組織する「上越市中心市街地活性化協議会」が、発言の真意などを問う質問書を提出する事態となった。

◇現場主義を反映
 選挙時から徹底して「現場主義」を掲げる中川市長は、市民の意見を聞く機会を積極的に設けている。
 地域に赴き、「移動市長室」や中学校区ごとの「対話集会」を実施。10月24日の定例記者会見では「市民と地域の現状や課題を共有し、共に地域の将来について考えることができる有意義な機会となった」と振り返り、「今後も現場の声を市政に反映する取り組みを継続していきたい」と力を込めた。

市民や関係者の声を聞く場を多く設けているのは中川市長の姿勢。写真は柿崎区の対話集会(8月)

 中川市長は同日の会見で1年を振り返り、「改革と変化、安定と秩序のバランスに意を用いつつ、一日一日を精力的に過ごしてきた」とし、周囲や市民への感謝を口にし、「『暮らしやすく、希望あふれるまち』の実現に向け、2年目も全力で取り組む」と前を向いて話した。
 「1年目は、私が掲げた公約の推進に向けた準備期間」と位置付け、九つの政策プロジェクトについて「緒に就いたばかりだが、いずれも市民と約束した重要な施策。実現に向け、鋭意検討を進める」と意気込みを表した。

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