伝統の穴窯、継続に「まきが足りない」 年1度の窯焚き断念、三浦の工房が提供呼びかけ

穴窯の中をチェックする田中さん。後ろに積まれているのは松のまき=陶芸工房「夢窯」

 日本で最も古い様式の窯といわれ、県内でも数少ない「穴窯」が三浦市内にある。陶芸愛好家が集まった工房が運営しているが、今年は新型コロナウイルスの影響などで燃料のまきが確保できず、年に1度の秋の窯焚(た)きを断念した。関係者は「貴重な窯を継承するためにも、まきに使う木材を提供してほしい」と呼びかけている。

 穴窯は、同市南下浦町金田の雑木林と畑に囲まれた場所にある。厚い耐火れんがで造られ、内部は長さ約8メートル。一度に500個の作品を焼くことができる。横須賀市内にあったが周囲の宅地化を受け、20年ほど前に移転して造り直した。

 穴窯は年に1度しか使わない。成形した作品を5昼夜にわたって加熱するため、大量のまきが必要だからだ。900度を超えてからも作業は48時間続き、ピーク時には10分置きに火力の強い松のまきを50本入れる。

 運営する陶芸工房「夢窯」の共同代表田中史郎さん(72)は「長時間焼くため土が硬くなり、自然に降りかかるまきの灰と炎によって独特な模様ができる」と穴窯焚きの魅力を語る。

 まきに使う木材は造園業者や解体業者、公園管理者などから無料で提供を受けている。伐採した樹木や廃材を廃棄する場合は処理費用がかかるため、常連の協力者もいる。

 例年は夏にまきを乾燥させ、10月後半から窯焚きするが、今年は松の木を中心にまきの材料が集まらず断念した。「コロナ禍で伐採作業が滞ったことも影響しているようだ。使わないと窯は劣化する。まきは徐々に集まっており、来春には窯焚きしたい」と田中さんは話す。

 12月3、4の両日に三浦市民交流センター(同市初声町下宮田)で開かれる夢窯作品展では、灯油窯で焼いた陶器を中心に約200点を展示する。

 問い合わせは、夢窯電話070(3273)0223。

© 株式会社神奈川新聞社