10月に逝去した横浜出身のアントニオ猪木さん=享年(79)=は5年前、上位争いをしていた横浜DeNAベイスターズにも「闘魂」を注入していた。ビンタを食らったのは、「ゴメス」の愛称で親しまれ、当時は貴重な右の代打として活躍していた後藤武敏・現楽天コーチだ。
「うちわのように巨大だった」と回想する平手を後藤さんが食らったのは、2017年8月。2、3位争いを繰り広げた阪神との試合前のことだった。
「横浜が生んだスーパースター」と紹介された猪木さんは、チームカラーの青色マフラー姿で横浜スタジアムに登場。「ゴメス選手出てこい」と、「炎のファイター」を入場曲にしていた後藤さんを呼び出した。「いくぞっ」と左ほほに一発。後藤さんは苦悶の表情でふらつき、会場を沸かせたが、実は「全然痛くなかった」という。
この試合で後藤さんは、7回1死一塁の場面で代打に送られた。結果は初球を強振して遊ゴロの併殺打。「気合が入り過ぎて前のめりになった」と懐かしんだ。
「元気があれば優勝もできる」と猪木さんから激励も受けた。この試合は大敗したものの、3位でシーズンを終えたベイはクライマックスシリーズを勝ち上がり、ソフトバンクとの日本シリーズに進出した。
「炎のファイター」は後藤さんにとって今も、闘志に〝着火〟する「起爆剤」だ。「注入された闘魂は自分に息づいています」と、後藤さんは楽天のユニホームを着る今も感謝する。