英国で2歳の男児が「カビが原因で死亡」と判明、波紋広がる

 英国で15日、2020年に公営住宅で死亡した2歳の男児の死因が、自宅のカビに長期間さらされたことだったことが分かったと検視官が発表し、波紋を広げている。男児の父親は、公営住宅に引っ越した当初から居室にカビが生えているとして管理者に対応を訴えていたが、積極的な措置がなされなかったと非難しており、自身がスーダンからの移民であるため差別的な対応をされたとしている。

カビ対処を訴えるも「ペンキ塗って」

 英国マンチェスター近郊のロッチデールの公営住宅にに両親とともに暮らしていたアワブ・イシャクちゃん(当時2歳)が2020年12月、呼吸困難になり病院に搬送されるも死亡した。父親によると、自身が2017年にスーダンからロッチデールの公営住宅に移り住んでまもなく居室に恒常的にカビが発生。管理会社に対処を訴えたが「ペンキを塗ってください」と言われるだけだったという。翌2018年にイシャクちゃんが生まれて以降も、カビに対する管理会社の対処はほぼなされず、その年の6月には、父親が弁護士を通じて対処を求める事態に。しかし法的な調停のプロセスに入ったことで、逆に合意がなされるまで対処がされない状態になってしまった。イシャクちゃんに当初健康的な問題は生じていなかったが、2020年12月19日に息切れが激しくなり、病院に搬送されたものの翌日死亡した。

 こういった経緯から、父親はイシャクちゃんの死因はカビであり、対処されなかったのは自分たちが移民であることによる人種差別だと訴えており、管理会社である住宅公社を激しく非難している。そして担当となった検視官、ジョアン・カースリー氏が15日、正式に「自宅に発生したカビに長期間さらされたことによる重度の呼吸器疾患」が死因だと発表するにいたった。同氏は「2020年の英国で、2歳児がカビで死ぬとはいったいどういうことか」と述べ、対処に前向きでなかった住宅公社の姿勢を非難している。

 非難の矛先となった住宅公社は人種差別を否定しながらも、非常に厳しい教訓だとし、今後は対応を改善することを示唆している。

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