謎めいた米軍のスペースプレーン「X-37B」908日間のミッションを終えて帰還

【▲ ケネディ宇宙センター打ち上げ着陸施設(LLF)に着陸した米宇宙軍の無人軌道試験機X-37B(Credit: Boeing / U.S. Space Force)】

アメリカ宇宙軍は11月12日、無人軌道試験機「X-37B」がミッションを終えて帰還したことを発表しました。

X-37Bは2020年5月17日に地球低軌道へ投入されて以来、6度目のミッション「OTV-6」を実施していました。2年半に及ぶミッションを終えたX-37Bは、米国東部標準時2022年11月12日5時22分(日本時間同日19時22分)、ケネディ宇宙センター打ち上げ着陸施設(旧シャトル着陸施設)の滑走路に着陸しました。今回のミッション期間は908日間を記録しており、前回のミッション「OTV-5」の780日間を大きく上回っています。

米宇宙軍やX-37Bの製造を担当したボーイングによると、OTV-6では海軍研究所による宇宙太陽発電(軌道上の発電衛星からマイクロ波に変換した電気を地上へ送電する発電方法)の実験や、空軍士官候補生が製作した小型衛星「FalconSat-8」の放出などが行われました。2021年10月にX-37Bから放出されたFalconSat-8は現在も地球低軌道を周回しており、士官候補生の訓練に用いられるといいます。また、OTV-6では熱制御コーティング、プリンテッド・エレクトロニクス、放射線遮蔽材料の候補、種子の宇宙空間曝露といった、NASAの実験も複数実施された模様です。

なお、今回のミッションでは初めて「サービスモジュール」が用いられたとされています。サービスモジュールはX-37Bの機体後部に取り付けるリング状の構造物で、機体内部の格納スペースに加えて機体外部にも実験装置などを搭載できるようになります。

米空軍のJoseph Fritschen中佐は「軌道で実験を行い、地上で詳しい分析を行うために安全に持ち帰る能力は、空軍省と科学界の双方にとって価値あるものだと証明されています。サービスモジュールを追加したOTV-6では、従来よりも多くの実験に対応することができました」とコメントしています。

【▲ ケネディ宇宙センター打ち上げ着陸施設(LLF)に着陸した米宇宙軍の無人軌道試験機X-37B(Credit: Boeing / U.S. Space Force)】

関連:謎の米空軍スペースプレーン「X-37B」6度目のミッションに向け打ち上げへ

Source

  • Image Credit: Boeing / U.S. Space Force
  • USSF \- X-37B orbital test vehicle concludes sixth successful mission
  • Boeing \- Boeing-Built X-37B Completes Sixth Mission, Sets New Endurance Record

文/松村武宏

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