鎌倉郊外の住宅街に鮮魚店復活を 買い物難民対策で住民らがプロジェクト 閉店の店舗活用、移動販売も

今夏の移動販売車でのテスト販売の様子(狩野さん提供)

 鎌倉市の郊外にある住宅街に鮮魚店を復活させるプロジェクトが地域住民らの手で進められている。商店街の閉店した元鮮魚店を活用し、周辺地域にも移動販売車で売る構想だ。取り組みを進める狩野真実さん(42)=鎌倉市材木座=は「高齢者の『買い物難民化』は全国どこでも抱えている問題。取り組みが全国に波及していければ」と意欲を見せている。

 きっかけは2018年に鹿児島県阿久根市が主体となって鎌倉市今泉台で行われた移動販売だった。高度経済成長期に開発された今泉台では65歳以上の高齢化率が45%となり、地域の商店が次々と閉店。住民はバスなどを使って遠くのスーパーまで買い物に出かけている。買い物に苦労している高齢者に新鮮な魚は歓迎され、用意した商品は完売したという。

 一方の阿久根市は魚種が豊富な漁場に近いものの、後継者不足や若者の「都会志向」もあり、将来の水産業の在り方が危ぶまれていた。

 当時の今泉台町内会長から、狩野さんに「次の販売はいつやるの」との声がかけられ、梶原山町内会からも、「うちの町内会でもぜひ」との声が上がったという。

 昨年末ぐらいから具体的な「事業化への歩み」が進み出した。今年7月には需要を探るため移動販売車でのテスト販売が行われた。また、商店街の鮮魚店跡地の整備のためクラウドファンディング(CF)を実施。数百万円の開業資金を集めた。現在は、加工場と店舗を兼ねた物件の整備を進めている。

 7日には、「一般社団法人鎌倉さかなの協同販売所」を設立した。移動販売を経て、年明けにはオープンにこぎ着けたい考えだ。スーパーにはあまり出回らない、ヤガラやイラといった珍しい魚を直送で扱うなど差別化を図り、将来的には地元鎌倉の魚をラインアップに加えていく。狩野さんは「『出店』要請がある町内会を中心に回ることで、軌道に乗せていきたい」と語る。

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