上越市高田城址公園の北堀(県立高田北城高前)に今年3月からすみ着いている、羽が折れて飛べない1羽のオオハクチョウ。2度目の冬を迎えようとしている。
夏の間はハスの葉が生い茂り、姿が確認できずにいた。秋になり葉や茎が枯れ始めると、水面に浮かぶ純白の姿が遠目にも確認できるようになった。
秋空が広がった19日、岸辺にたたずむハクチョウを撮影。下校の学生や散策の市民が通り掛かっても、一心に草をついばんだり、羽をばたつかせたり。たたずまいに風格を感じるほどだ。
周辺の散歩を日課にしている同市高土町2の女性(81)は「しばらく見掛けなかったが、無事な姿を見て安心した。近づくと寄ってきて、かわいい」と笑顔で話した。
日本野鳥の会会員の勝俣将明さん(上越市立雄志中校長)に、3月に撮影した写真と見比べてもらった。
勝俣さんによると、3月にはあった初列風切羽(しょれつかざきりばね=羽ばたいたときに浮力や推進力を与える部分)が折れてなくなっており、飛ぶことはほぼ難しいという。「暑さや、ハスが繁茂する過酷な環境の中を生き抜いた形跡。生命力、適応力に驚く」と話した。同時に、来年は休息場所周辺のハスを除去するなどして、水面が確保されるよう整備する必要があるとの見解を示した。
同公園を管理する市都市整備課の山辺志信副課長は「公園管理人が定期的に見回っており、ハクチョウは元気」と話し、「これまで通り、そっと見守ってほしい」と呼び掛ける。
過酷な夏を、たった1羽で乗り越えたオオハクチョウ。雪が降る頃になればハスも水面から消え、仲間たちが北からやって来る。安心できる環境はもう間もなくだ。