【コラム・天風録】保育士3人逮捕

 心豊かで思いやりのある子どもの育成―。そんな目標を掲げる静岡県内の保育園にきのう、捜査の手が入った。3人の保育士が園児を宙づりにしたり、カッターナイフを見せて脅したりした疑いがあるという▲あきれるのは「しつけ」を言い訳にしていることだ。わが子の命を奪った何人もの虐待親が繰り返してきた体罰肯定の言葉と同じだ。正面から子どもと向き合うプロなのに、なぜそんな自己弁護が今なお出てくるのか▲3人の逮捕は当然だとしても保育園の体質も問題だ。何せ、「当園の機密事項などを漏洩(ろうえい)したりしないこと」という誓約書を全ての保育士に書かせていたという。隠蔽(いんぺい)するつもりはなかったと釈明されても、真に受けるわけにはいかない▲虐待に気付いた別の保育士には土下座までして口止めしたそうだ。園側の入念な「工作」としか受け取れない。思っていることをはっきり言える子どもに、と園児に求める一方、大人に沈黙を強いるのは身勝手過ぎる▲子どもの命や笑顔を最優先に考えるべきなのに、保育園の体面を守ろうとしたのだろうか。筋違いも甚だしい。自ら掲げた保育目標の重みをかみしめないと、地に落ちた信頼は取り戻せまい。

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