防衛費増額、増税しなくても財源は確保できる!|和田政宗 12月7日、「防衛費増額の財源 一部は増税で 与党幹部が合意」(TBS)との速報が流れたが、安倍元総理が提唱していた「防衛国債」の発行の話はどこに行ってしまったのか。そもそも防衛費の増額がなぜ必要なのか。自民党の和田政宗議員が緊急提言!

安倍元総理が〝フル回転〟した理由

防衛費について来年度から5年で43兆円を確保するとの方針が示された。その財源については将来的な増税が検討されているが、私は増税しなくても財源は確保できると考えている。

新型コロナ禍からの経済回復による税収増(現在でも税収は2年連続で過去最高)が見込まれるとともに、外為特会の含み益は37兆円ある。さらに、諸外国では制度が廃止されているのに日本では行っている国債の減債制度をやめることで約15兆円捻出することができる。そして、安倍晋三元総理が提唱していた「防衛国債」の発行の話はどこに行ってしまったのか。

増税ありきではなく、増税しなくても済む方法を考えるべきであるし、自民党内での徹底した議論はこれまで実施されていない。来週、自民党税制調査会で議論がなされる方向であるが、中堅若手の有志をはじめとして、増税反対の声は大いに上がるであろう。増税なき防衛費増強を実現しなくてはならない。

そもそも防衛費の増額がなぜ必要か。

それは北朝鮮のミサイル開発の脅威とともに、もっとも重要なのは中国による侵略への対応である。台湾侵略が迫るなか、「尖閣は台湾の一部」と主張する中国の言動を考えれば、台湾侵略と尖閣侵略は同時に行われる可能性が極めて高く、我が国は国防力、なかでも抑止力を高めることが重要となっている。

なぜ、安倍元総理が今年になって活動をフル回転まで引き上げていたかと言えば、習近平国家主席が3期目の5年に突入するなかで、習氏が4期目以降を目指し毛沢東越えを狙うには、3期目の前半で台湾侵略を始めるのではないかと考えたからである。日本に残された猶予は約2年しかないし、習氏が決断すれば台湾侵略は今にでも始まるから、猶予はもうすでにないとも言える。

こうしたなか、防衛省が米国のトマホークを500発購入するという報道が流れた。詳細について防衛省は明かさないが、方向性として私は間違っていないと思うし、これを実現すべきである。

敵地反撃能力と南西諸島防衛

平成27(2015)年の平和安全法制の国会審議時にも私は導入を提唱していたが、ようやくという気持ちが強い。国産スタンドオフミサイル(長射程巡航ミサイル)の開発配備までは、早くてもまだ2年かかるから、抑止力のために速やかにトマホークを購入し配備すべきである。

今までのイージスシステムをはじめとする日本の迎撃態勢は、敵がピストルを発射し、こちらに向かってくる弾を、こちらもピストルを発射し、発射した弾で撃ち落とすというものであった。100発100中になればいいが、確率論からすると1発か2発撃ち漏らす可能性は否定できない。

だから、相手が撃とうとしたときに、撃つならこちらも撃ちますよということができれば、相手は自らの命が失われるかもしれないと撃つのを躊躇する。これが抑止力であり、敵地を破壊できる能力をまずトマホークで持つことは極めて重要である。

さらに重要なことは、敵地反撃能力を持った上で、いつどの段階になれば敵を叩けるのかということである。これまでの政府の答弁では、ミサイルがまさに発射台にあり燃料が充填されていて日本を明らかに攻撃する時、などとされてきたが、細かく規定すれば相手に手の内を明かすことになる。

今回、敵地反撃能力の政府見解が示され、与党合意もなされたが、いつどの段階になれば敵国が攻撃に着手したとみなすかは明記されなかった。これは抑止力の観点から重要であり、手の内を明かさず、我が国が判断すれば敵地攻撃をできるということを担保することが、抑止力を高めることに繋がるのである。

さらに、沖縄において南西諸島防衛を担う陸上自衛隊の第15旅団を、師団に準ずる「南西防衛集団」に格上げする方針も極めて重要だ。必ず実現をしなくてはならない。

防衛費の増額は当然のことだ

第4回(11月21日)国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議

まず、南西諸島の防衛は、能力と装備の充実とともに住民の理解促進が重要だが、住民交流や理解促進の役割を担う沖縄地方協力本部の現在の本部長は、その世代の防大同期のなかでもエースと目される陸将補が就任している。極めて能力が高い方で、沖縄、南西諸島と日本の防衛の重要性を説いて理解促進を図っている。

これに加え、「南西防衛集団」が創設される。これまでの旅団トップは陸将補であったが、防衛集団となればトップは陸将となる可能性が強い。すなわち諸外国の階級であれば中将以上となり、在沖縄の米国海兵隊トップ(海兵隊中将)と同等以上の地位で連携が取れることとなる。これは極めて大きい。

さらに、政府は今月中に改定予定の国家安全保障戦略など「安保3文書」で、空からの脅威に統合的に対応する「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」の構築を明記する方針だ。ミサイル迎撃を柱とする現在の「総合ミサイル防空」から、敵地攻撃能力を組み込んだ「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」を導入し、IAMDを推進する米軍との連携を深め、抑止力を高める。

ようやく国土と国民を守る抑止力の整備が行われていく。これまでの我が国の防衛は、北朝鮮のミサイルが発射された時の対応のように、先の大戦中に空襲警報が鳴り国民が逃げ惑った状況と何ら変わらないものであった。

ミサイルを撃たれ、それが我が国を狙うものであったり、我が国上空を超えさせようとしたものの失敗し落下する時に、迎撃を外せば国民の命が失われる。あまりに受け手すぎる防衛であった。だからこそ抑止力を高め、相手に撃たせないことが重要である。「IMAD」は、ミサイル攻撃等を未然に防ぐため、敵地などへの攻撃作戦を含むものである。

真に我が国を守るための防衛力、抑止力を持つために、防衛費の増額は当然のことである。増税によらず、安定財源を確保する。防衛国債の導入をはじめとし、党内で徹底的な異論を行い実現していきたい。

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和田政宗

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