NASA新型宇宙船オリオンが無人飛行試験を終えて地球に帰還 アルテミス1ミッション完了

【▲ 25日半に渡る無人飛行を終えて帰還したオリオン宇宙船のクルーモジュール(Credit: NASA)】

2022年12月12日(日本時間・以下同様)、無人飛行試験を行っていたアメリカ航空宇宙局(NASA)の新型宇宙船「Orion(オリオン、オライオン)」が地球に帰還しました。オリオン宇宙船が初めて月周辺を飛行した25日半に渡るミッションは、成功裏に完了したことになります。

【特集】「アルテミス1」有人月面探査計画の最初のミッション

オリオン宇宙船は月面探査計画「アルテミス」や、将来の火星探査も想定してNASAが開発した有人宇宙船です。NASAは「アルテミス1」ミッションで無人飛行試験を行うために、2022年11月16日に新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」初号機でオリオンを打ち上げました。

オリオン宇宙船の船内には後のミッションでの有人飛行に備えて、人体への宇宙放射線の影響を測定するためのマネキンや人体模型が搭載されていました。NASAは11月26日にオリオン宇宙船を月の周回軌道へ投入して、深宇宙環境で各種点検を実施。12月2日に月周回軌道を離脱させた後、12月6日の月フライバイで軌道を修正し、オリオン宇宙船を地球に向かう軌道に乗せていました。

【▲ 日本時間2022年12月12日2時40分、バハ・カリフォルニア半島沖の太平洋上に着水したオリオン宇宙船のクルーモジュール(Credit: NASA)】

12月12日の大気圏再突入は、オリオン宇宙船のクルーモジュール(Crew Module、宇宙飛行士が搭乗する円錐形のモジュール)が月周辺から帰還する際の高温に耐えられるかどうかを確かめる、ミッション最後の重要な試験でもありました。

12日2時頃にサービスモジュール(European Service Module、エンジンや太陽電池アレイを備えたモジュール)を切り離したクルーモジュールは、設定された地点へ着水するためのスキップエントリー(Skip Entry)を行いつつ大気圏内を飛行し、同日2時40分にバハ・カリフォルニア半島沖の太平洋上へ着水することに成功しました。

関連:NASA「アルテミス計画」最初のミッションでテストされるオリオン宇宙船の再突入方法(2021年4月)

【▲ 回収を待つオリオン宇宙船のクルーモジュールと回収チームを乗せたボート。奥に見えているのは輸送揚陸艦ポートランド(Credit: NASA)】

NASAによると、帰還したオリオン宇宙船のクルーモジュールは回収のため待機していた米海軍の輸送揚陸艦「ポートランド(USS Portland)」に収容されました。このあとポートランドは米国カリフォルニア州のサンディエゴ海軍基地に向かいます。クルーモジュールは陸路でケネディ宇宙センターに運ばれ、機体と耐熱シールドは数か月間に渡るテストと分析を受ける予定です。

「世界で最も強力なロケットに打ち上げられて月を周回し、そして地球へと戻るこの飛行試験は、月探査のアルテミス世代における大きな前進です」(NASAビル・ネルソン長官)

なお、アルテミス計画の次なるミッションは、実際に宇宙飛行士がオリオン宇宙船に搭乗して行われる「アルテミス2」です。アルテミス2ミッションでは月着陸は行われませんが、SLSで打ち上げられたオリオン宇宙船は月の裏側へ回った後に地球へ帰還します。アルテミス2ミッションの実施は1年半後の2024年5月に予定されています。

【▲ ポートランドのウェルドックに収容されるオリオン宇宙船のクルーモジュール(Credit: NASA)】

※2022年12月11日公開の記事にてオリオン宇宙船の着水予定時刻(日本時間)を「2022年12月12日1時39分」と表記していましたが、正しくは「2022年12月12日2時39分」です(NASAがCST/米国中部標準時で表記した時刻をEST/米国東部標準時と誤認したため)。訂正してお詫び申し上げます。

Source

  • Image Credit: NASA
  • NASA \- Splashdown! NASA’s Orion Returns to Earth After Historic Moon Mission
  • NASA \- Artemis (NASA Blogs)

文/sorae編集部

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